ひとみの健康…健やかな生活のために うみの星眼科 松村謙一郎 目は心の窓といわれ、健康な目を維持することは肉体的・精神的に健康な生活を送るための基本となります。人間の生涯は、まわりからの刺激とそれに対する反応の繰り返しです。楽しければ笑い、悲しければ涙を流し、美味しいものを頂けば幸せな気持ちになり、まずいものを食えば腹も立ちます。実はこういった人間の受ける刺激の8割が目を通した視覚情報によるといわれています。そして現代社会は文字情報・画像情報によってコミュニケーションを行う時代でもあります。まさに目の健康は人生を豊かで幸せに過ごすためには必要不可欠なものといえるのではないでしょうか。 今や人生80年の時代、目の健康を維持して豊かな生活を享受するためにはそれなりの健康管理が必要です。「白内障」は非常に多い病気ですが、診断・治療は比較的簡単ですので目の変調を感じたら気軽に眼科を受診されて下さい。適切なアドバイスができると思います。一方、40歳以上の方の30人に1人が「緑内障」を患っていると言われていますが、自覚症状に乏しく、慢性の病気でもあるため8割の方が治療を受けておられないのが現状です。この「緑内障」は早期発見・早期治療が重要ですので、眼科を受診された際に「緑内障」の検査も受けられることをお勧めいたします。また、糖尿病、高血圧症の方の中には眼底(網膜・硝子体など)に出血をおこし、それがもとになって失明する人がおられます。内科ではコントロール良好で一見問題がなくても、目の奥は非常に危険な状態という人もおられますから、この様な病気で通院中の方は少なくとも年に1度眼底検査を受けられることをお勧めいたします。 人生を豊かで幸せに過ごすために目はかけがえのないものです。この大事な目を精一杯活用するために、日頃から目の健康にも心がけて下さい。 (平成10年2月掲載) |
健やかに老いるための運動の効果 松尾外科医院 松 尾 高 祐 車社会、飽食の時代、運動不足で職場や一般検診結果、血中脂質、肝機能、血圧等の異常者が増え、若年者の突然過労死等が問題となっています。誰でも加齢により体力・運動機能の低下をおこします。体力の指標は酸素摂取量の減少でとらえられており、30歳代後半より男性では年間1.2%減少します。一方習慣的に運動を継続している人は年間1%未満の減少率です。加齢と共に運動している者としない者の体力の差が開くことになります。もう一つは心筋梗塞を代表とする虚血性心疾患や脳血管障害など動脈硬化を基盤として発生する生活習慣病はその増悪因子として、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症などの危険因子が存在します。この危険因子改善に運動が有効なことが認められています。すなわち生活習慣病の二次予防効果です。更に運動不足そのものが高血圧、肥満、糖代謝異常の引き金になることから、運動は一次予防の効果も有していることになります。女性では閉経後の骨粗鬆症が急速に進行しますが、運動により骨密度の増加があり、その進行を遅らせることが可能です。また、脳の血流増加によりぼけ防止にもなります。 運動が健康維持増進のために良いからと言っても安全に行われて初めて生活の質の向上が図られます。色々の危険な病気を有している人、自覚症状は認めず、一般検診でも心・血管系に異常を認めない潜在性心疾患を持つ人もいます。運動によって突然死を始めようとする心・血管系の事故をおこさぬように、事前に十分なメディカルチェックを各人に適した運動指導のもとに開始して下さい。 運動は有酸素運動(歩行・ジョギング・水泳・自転車等)です。運動前後に十分なストレッチ、柔軟体操をやり、汗ばむ程度、少しきついと感じる程度で翌日に疲れを残さない程度のを1日15分以上週3回以上を継続しましょう。 (平成9年11月掲載) |
ストレスとこころの健康 うえき心療内科クリニック 植 木 健 「最近どうもストレスが溜まっているなあ」、「ストレス解消に気分転換をしたいなあ」、などと考えていらっしゃる方も多いことでしょう。職場の人間関係のストレス、子供の教育や老親の介護をめぐるストレス、親子関係、嫁姑の関係によるストレスや学校生活におけるストレスなど、現代人は日々ストレスに悩まされる場合が少なくありません。 心や身体が疲れているときに長時間ストレスを受け続けると、不眠や不安、気分の落ち込みやイライラといった心の症状や、倦怠感、めまい、頭痛、頭重、動悸、息切れ、胃痛、下痢、腹部不快感などの自立神経失調症と呼ばれる身体の症状が現れることがあります。 ただ、ストレスがあれば必ずこのような症状が現れる訳ではありません。たとえば、ある会社の管理職という仕事が#A氏にはとても大きなストレスとなり自立神経失調症で悩んでいるのに、非常によく似た立場でほぼ同じストレスを受けているB氏には全く症状が出ない場合もあります。これは、ストレスというものが、外部から一方的に押し寄せてくるものではなく、自分の中にあるもの、さらには自分の中でつくり出してしまうものといった面があることを意味しています。このことはストレスに対する耐性(抵抗力)があるかどうかという問題と、ストレスをどう発散するかという問題と関連しています。 ストレスに対する抵抗力を高める方法としては、日常生活のバランスを保つために、@十分な睡眠と休養、A栄養バランスのとれた食事、B適度な運動などにこころがけ、もし症状が出現したら、C症状の悪循環を避けるための薬物療法や、Dリラクゼーション、E自立訓練法、F専門家のカウンセリングやG心理的療法を受けることをお勧めします。 (平成9年10月掲載) |
気管支喘息と学校生活について 須田小児科医院 須 田 正 智 子どもたちにとっては新学期を迎える春になりました。体に不釣り合いな、ピカピカのランドセルを背負って登校する新一年生の姿は、ほほえましいものですが、気管支喘息などの病気をかかえているお子さんの場合、新しい環境に慣れるまでは、心配もひとしおと思います。 小学児童100人中5人弱が喘息ですが、小学校入学後は段々軽くなり、小学校高学年から中学にかけて、発作はとれていくことが多いようです。季節的には、春は秋に次いで発作がおこりやすいシーズンですが、花粉症で問題になるスギ花粉が喘息の原因になることはまれです。 アレルゲンとして最も重要なのは家ダニです。学校は家庭よりダニの少ない環境で、それほど心配しなくていいのですが、しばしば発作をおこすお子さんの場合は、掃除中ホコリを吸わない注意が必要ですし、動物の毛もアレルゲンとなりやすいため、動物の飼育係は不適です。 喘息児の学校生活で特に問題になるのは運動です。喘息児が運動をすると発作がおこることがあり、運動誘発性喘息とよばれていますが、喘息の程度 (重症度)、運動の種類、運動の持続時間、環境条件などでおこり方が異なり、軽症の子ではおこりにくく、ランニング(長距離)は最も発生のおこりやすい運動で、水泳はおこりにくい運動の代表です。強い運動を6分間以上続けるとおこりやすく、気温が低く、乾燥した気象条件ではおこりやすくなります。こう書きますと、冬の耐寒マラソンは発作がおこりやすい条件をそろえていますが、発作をおこさない距離でランニングを続けていますと、トレーニング効果が認められ、走れる距離が次第に伸びてきます。万が一発作がおこつた場合、その時点で休むと30分以内に発作はおさまります。 予防としては、運動が激しくなると無理ですが、なるべく鼻呼吸をすること。ガーゼのマスクの着用−これも長距離ランニングでは無理ですが、登山などでは驚くほど効果があります。また、安心して使える予防薬もありますから、しばしば運動後に発作がおこる人は、病院で相談してください。 喘息であってもオリンピック選手になった人も珍しくなく(1988年米国選手団611人中運動喘息あり52人)、金メダルをとつた選手もいますから、体調に合わせて、上手に積極的に運動と取り組んでください。 (平成9年3月掲載) |
「黄昏どきの」からだ さくらクリニック 石 田 賢 二 一日の黄昏どきのように長い人生航路の中で、疲れのでやすい時期を元気に過ごされるか否かはとても重要なことです。 三大死因となる脳卒中・心臓病・癌を予防する医学、早期発見する医学は年々目を見張るものがあります。脳卒中・心臓病は生活習慣によるものが原因となる肥満・動脈硬化・高血圧・糖尿病・高脂血症などが根底にあることが多いものです。 これは食事、運動療法を適切な指示のもとに実行されれば、一生良好にコントロールできるものです。しかし進行した癌はほとんどが治療の甲斐なく死に至る恐しい病気です。これは現在のところ早期発見、早期治療以外にありません。早期癌の発見治療は医療機器の進歩と医療者側の技術向上により、ここ数年でも隔世の感があります。 例えば消化器系の癌(胃、大腸、肝臓)は検査時間が数分しかかからない胃カメラ・大腸カメラ・超音波(エコー)・CT検査にて数ミリの癌まで発見できるようになりました。中でも早期胃癌については、バリウムを飲んで放射線をあて、その影をみる胃透視ではわからない胃粘膜の色調の違い、わずかな凹凸でも胃カメラでは直接見ることができます。 胃癌の多い佐賀県のある町では、町の胃検診に胃透視か胃カメラかを選べるシステムを採用してからは、胃透視では胃癌の中の早期癌の発見率は約10%であったのが、胃カメラでは何と65%と驚異的に上昇しています。しかし、いくら技術が進んだとはいえ、一人ひとりが自分の体に日頃より注意を払って「いつもとは違う」という自覚症状を大切にして頂かねばなりません。病気にならないための予防を第一に、不幸にして病気が出現したときでも早期発見、治療によりいつまでも元気で過ごせますように。 (平成10年10月掲載) |
鉄欠乏症貧血 川本内科医院 川 本 幹 夫 鉄欠乏性貧血は、もっともよくみられるタイプの貧血で、鉄は赤血球の内にあって酸素をはこぶ役割をしている血色素の骨格の一部です。この貧血は、十代から中年にかけての女性に多くみられます。(ときには若年男性もいますが)その理由は@急な身体の成長、A生理による出血、B妊娠・出産・授乳、C激しい運動などが重なって鉄がたくさん必要になるのに、一方で偏食とか無理なダイエット、あるいはきちんと食事をとっていても十二指腸からの鉄の吸収がふえないたちの人がいるなどで鉄が欠乏してくるのです。 症状は、たちくらみ、いきぎれ、スタミナがおちた、顔色が悪い、味覚異常、爪の変形(スプーン状)などですが、発症がゆっくりしているため症状が軽く放置されがちです。診察しても顔色、まぶたのウラがわの色調は個人差があって、診断に迷うことがよくあります。このようなときは、積極的に血液検査をするようにしています。 治療については、食事は赤身の肉とかレバー、緑黄色の野菜(ビタミンCは鉄の吸収を助ける)などをふやすようにしますが、食事だけでは回復にヒマがかかるので鉄剤を内服します。胃腸障害のためにどうしても内服できない人はたまに注射します。治療によってふつうは2〜3ヶ月で貧血は回復しますが、そこでやめると体内の鉄貯蔵が十分にふえていないためすぐに再発がおこるので、さらに半年くらい治療は続けられるべきです。 中年以上(特に男性)で鉄欠乏性貧血を認めた場合、ガンなど、慢性的出血している病気が潜んでいることがあり、必ず全身的に精密検査をうけられることをお勧めします。 (平成9年10月掲載) |
漢方について知っていますか? 前川外科クリニック 前 川 靖 裕 ―漢方を取り巻く誤解― 漢方は明治維新以降、急激に衰えました。その漢方が最近見直されつつあります。しかし、専門家の目で見れば、漢方薬に様々な誤解がまつわりついています。その中の最たるものが『漢方薬は、長い間飲まないと効かない』というものです。実際には即効性の薬も多いのです。たとえば、風邪で38℃台の熱のある子供に、漢方薬を飲ませたら、15分(!)後に平熱になった症例。原因不明のめまいで、治療法がないと言われた患者さんに漢方薬を飲ませたら、3日でめまいがなくなった症例。などなど、これらは極端な例ですが、西洋医学以上の力を発揮する場合も多いのです。 ―人と薬の相性― たとえば、風邪に関連して使用される処方は、ざっとあげただけでも、20種類を軽く越えます。これらの処方の中から、個人の体質だけではなく、そのときの体調にあわせて、処方を選んで使用することが大切になります。ただし、このもっとも適切なものを選ぶということが、専門家でも難しいことなのです。これがピタリと当ったときには、前に述べたような、すばらしい治療効果が得られます。 ―気持ち良く、無理をせず― 不眠症に効く漢方薬が数種類あります。自殺目的で、これを大量に飲んだ人が救急車で運ばれてきましたが、全く眠くならなかったそうです。いわゆる睡眠薬とちがって、むりやり眠らせる薬ではなく、自然の眠りを誘う薬だがらなのです。 ―おわりに― 『漢方薬は病を治すのではなく、人を治す』と言われます。病気の共通点を見つけて治療する西洋医学的発想は、今世紀において、すばらしい成果をあげてきました。しかし、これからは人間の個別性を重視する、東洋医学的発想も、重要になってくると考えられます。 (平成11年3月掲載) |
アトピー性皮膚炎について 黒木医院 前 田 啓 介 この数年、これほどマスコミに取り上げられ、数多い治療法が氾濫している皮膚病も少ないのではないでしょうか。アトピー性皮膚炎の患者さんは、もともと皮膚の防御機能が弱いために皮膚の内外からの刺激を受け、湿疹ができやすい体質と考えられています。そのため、かゆみのある湿疹が良くなったり、悪くなったりを繰り返し、慢性の経過をたどる性格の病気です。この病気の原因として有名なのはアレルギーですが、その他にも生活環境、汗や摩擦などの機械的刺激、ストレスなど様々な原因が複雑にからみあっています。アレルギー反応とは、本来からだに異物が侵入した時に排除しようとする反応が強く起きすぎてしまった時に出現する反応です。この病気の患者さんは、食物やダニなどを異物(抗原=アレルゲン)と認識して反応し、皮膚炎をおこします。原因となる抗原は、症状や血液検査等により、総合的に判断されます。 治療は前述したような原因抗原や悪化因子を取り除くことが根本的な治療となります。しかし、多数の原因が重なっていることが多いので、湿疹が良くなったり悪くなったりを繰り返すのは病気の性格上やむを得ないことです。良い状態の時は、保湿剤を塗るなどのスキンケアのみで十分ですが、皮膚炎が悪化した時には炎症を抑える必要があります。ステロイド外用剤は皮膚炎を抑えるのに有効なお薬ですが、誤った情報によって副作用を恐がり、このお薬をいやがる患者さんが増えています。ステロイド外用剤は、ぬり方や期間などを皮膚科専門医の指示通りに使用している限り、副作用を恐れる必要はありません。それでも不安な時は主治医に相談されるといいと思います。アトピー性皮膚炎は短期間で治そうとするのではなく、あせらず病気をコントロールし、よい状態を保てるようになれば自然と治る病気です。 (平成11年2月掲載) |
健康診断の結果を生かしましょう 早田内科医院 早 田 正 裕 一年の計は元旦にあり。自分の健康について年の初めに当たって考えてみましょう。病気の治療よりも、予防に勝る治療はありません。 それには、まず、健康診断を受けましょう。 現状では、いろんな所で健康診断が実施されています。病気の早期発見は勿論ですが、健康度のチェックも大事ですので、検診結果を見て異常なしとされた時には、ああ、良かった、と安心されると思いますが、それだけで済ますことなく、以前に健康診断を受けておられたら、その時の成績と見比べて見ましょう。 人間は毎日脱皮していると言われています。あの硬い骨でも毎日新しいものと古いものが入れ替わっているのです。健康と病気は、線を引いたように、はっきりと境されているものではありません。病気は突然発生したように見えても、その始まりは、かなり以前にあることが少なくありません。 健康状態は常に動いているものと考えて下さい。検査成績で緩やかに動くものと、ちょっとしたことで大きく変動するものがあります。肝機能、腎機能は余り大きく変動せず比較的に安定していますが、検査値が基準値内であっても次第に増加するようでしたら、自分の生活を見直してみましょう。血液中の脂肪分は食事によって変動を受け易いものです。前に比べて次第に上昇したり、かなり変動するようでしたら、食生活に誤りがないかを考えてみましょう。 体重の動きは健康度のバロメーターと言えましょう。よく標準体重と言いますが、統計上、もっとも病気の少ない体重という意味があります。年々、体重が増すようであれば、過食か運動不足と考えて、早く健康を良い状態に戻すように努めましょう。 病気の殆どが生活習慣病と考えてよいと思います。過食を避けバランスよく食事をとり、良い生活リズムを作りましょう。健康に勝る宝はありません。 (平成10年1月掲載) |
心臓病の予防について おおつか内科医院 大 塚 和 生 わが国の主要な死因の推移をみると、以前は肺炎、気管支炎、結核などの感染疾患が上位を占めていましたが、昭和60年以降、がん、心疾患、脳血管疾患、の順となっています。動脈硬化を原因として発症する。2位の心疾患と3位の脳血管疾患を加えると1位のがんをを上回ります。これはわが国の経済成長に伴う食生活の欧米化、生活習慣の変化が原因として考えられます。 心筋梗塞は、心臓の筋肉を養う冠状動脈という血管の内腔が動脈硬化性病変により閉塞し心筋壊死にいたるという恐ろしい病気です。まだ冠状動脈が閉塞してはいないが狭くなっている状態が狭心症です。狭心症はの症状は、安静時、労作時にかかわらず左胸部〜前胸部、場合によっては心窩部(胃部)の圧迫感、絞扼感として自覚され下顎部〜頚部〜左肩〜左上腕内側に窒息感、しびれ感を伴う場合もあります。このような胸痛発作が5分以内におさまる場合を狭心症発作といいますが30分間以上持続し冷や汗、嘔気の症状を伴う場合は心筋梗塞が強く疑われます。 心筋梗塞、狭心症は12月〜3月の冬場に発症する傾向があり、例えば重いものを持ち、階段を一気にかけあがったり、熱い風呂にはいったり、精神的ストレスで睡眠がとれないなど心臓の鼓動が早くなることをした場合、発作は誘発されやすくなります。また太っていて血圧が高くたばこの好きな人、血液中の糖やコレステロールの値が高い人は要注意といわれています。 心筋梗塞、狭心症の発症を予防するには定期検診(人間ドック、市の総合検診、会社検診など)を受け、危険因子といわれる高血圧、糖尿病、高脂血症を早期発見し早期に適切な食事指導と治療を開始することだといえます。すでに狭心症の場合も薬物療法のほかに心筋梗塞発症を予防するため冠動脈造影下にPTCA(バルーンによる狭窄冠動脈を拡張する方法)という治療法が安全におこなわれるようになってきています。 (平成9年1月掲載) |
糖尿病と仲良く付き合う法 中村医院 中村ますみ 生活習慣の積み重ねと、個人の持っている遺伝的素因、それに環境の要因が重なり合っておこる疾患を「生活習慣病」と言うようになりましたが、糖尿病は、その代表的なものといえるでしょう。 今日では、血管障害による合併症が最大の問題となっており、ご存知のように、放置して進行すると網膜症による失明や、腎症による人工透析、閉寒性動脈硬化症による壊疸など、典型的終末像に至ります。 しかし、これらの合併症は、最初から急速に進行するものではありません。多くの場合、糖尿病と診断されてから、十年、二十年という時間がたっています。ですから、この期間をどのように過ごすかが、大切な分かれ道となってくるのです。 近年、アメリカと日本の糖尿病患者で、七年程度の追跡調査が行なわれ、血糖コントロールを良好に保つことにより合併症の発症予防、進展阻止が証明されました。 即ち良好な血糖コントロールが出来ていれば、健康な人と変わりない人生を送れるということです。厄介な病気だ、恐ろしい病気だと悲観的になる必要はなく、積極的に糖尿病と向かい合ってほしいものです。 といっても、長い付き合いとなりますので、制限ばかりでは、途中で脱落してしまいます。 まずは、基本の食事療法や運動療法を、出来るだけ自分のライフスタイルに合わせて行えるよう、専門医と相談しましょう。 そして、少なくとも月一回は必要な検査を受け、医師に軌道修正をしてもらって下さい。最近は、手軽な検査で状態の肥握が、かなり出来るようになりました。 一病息災|糖尿病を予防することが、他の成人病の予防にもなることは間違いありません。 ご健闘を祈ります。 (平成10年6月掲載) |
乳房のしこり 中田外科胃腸科 中 田 俊 則 女性の乳房のしこりには良性のものと悪性のものがあります。良性なしこりとしては、比較的若い年齢の方にできる、コロコロした限局する硬いしこりの「線維腺腫」、中年の方にできる、ザラザラして大きくなったり小さくなったりし、月経前に痛みが強く月経が始まると軽くなる「乳腺症」などがあります。 悪性なしこりとしては、「乳がん」です。日本人女性の乳がんは増え続けており21世紀初めには女性のがんで1位になると予測されています。乳がんのしこりは、閉経前後の方に多く、触ると硬く、境目がはっきりしないしこりで、大抵の場合痛みを感じることはありません。 乳房は体の表面にあるので自分で異常を見つけることが出来ます。裸になった時に鏡の前で両手を下ろしたり上げたりして乳首のただれや向きの異常、ひふのひきつれやくぼみはないか、乳首をつまんで分泌物がないかなどをしらべます。次に、手のひらで反対側の乳房を軽く円を描きながらなでるように触ります。更に、触る乳房の方の手のひらを頭の後ろにあて胸をそらして反対側の人さし指、中指、薬指をそろえて肋骨に沿って外側から中央までまんべんなく触ります。このような方法を月経が終わって1週間から10日目頃に行うと触りやすくなります。 しこりを触ったら迷わず外科か婦人科を受診してください。超音波検査、乳房レントゲン撮影、細胞診、生検などを組み合わせてがんかどうかを診断します。 早期のがんであれば乳房を残した手術ができることもあります。早期乳がんでは長期生存が期待できるのです。 (平成9年6月掲載) |