心(精神)の病気について 中澤病院 中 澤 和 嘉 皆さんは心の病気、すなわち精神の病と聞くと不安な嫌な感じがして、自分とは無関係の病気と思われるでしょう。 実は、風邪などの病気と同じように、すごくありふれた病気なのです。生きていれば嬉しいこと・楽しいことばかりではなく、辛いこと、悲しいことなどいろんな試練に出会います。そのような時に、心の動揺がきっかけで心の病気が起こりやすくなるのです。普通の感情を持っている人なら、これまでに程度の差はあっても、心の病気を経験してきているはずです。不安で眠れない、心配で食事が喉を通らない、といったことがこれまでにあったはずです。しかしひどくならずに、いつの間にか消失したので、忘れてしまっていると思います。 心の病気もいろいろありますが、いずれも広い意味でそれぞれの人の持つ体質的な問題と、外部からのストレスによって引き起こされたものです。体質的な問題とは、心に疲れがたまりやすく、心が疲れているときに敏感になりすぎたり、緊張しすぎてしまうことです。また外部からのストレスは、日常生活している家庭や職場など周囲の環境から生じるものです。災害、仕事での過度の緊張やトラブル、学業や受験の失敗、家庭内の問題など、人間関係から生じるストレスがよくみられます。 ひとたび心の病気になると、今度は病気自体が新たなストレスとなり、放置すると少しずつひどくなっていきます。精神科を受診するのは恥ずかしいし、怖いなあと思われるでしょう。しかしどんな病気も、早期発見・早期治療が原則です。不安だ、よく眠れない、ゆううつで何もしたくないなどの症状が現われたら、ためらうことなく精神科を受診してください。 (平成9年5月掲載) |
かぜ薬の飲み方 ともなが内科クリニック 朝 長 昭 光 熱、咽頭痛、頭痛、鼻水、鼻づまり、咳、痰、体のだるさ、体のふしぶしの痛み、これらはカゼの主な症状です。また、最近では、ウィルス性胃腸炎といって、ムカムカ、胃痛・腹痛、下痢(軟便)などの胃腸の症状と頭が重い、フラフラするなどの症状を訴えるカゼの親戚みたいなものもあります。皆さんは、カゼをひいたなと思ったらどうされますか。 カゼの原因はウイルスです。残念ながら現在、このカゼのウイルスを殺す薬はありません。抗生物質は細菌を殺すことはできますが、ウィルスは殺せません。すなわち、カゼには効かないのです。それでは総合感冒剤も効かないのですか?もちろんウィルスは殺せません。総合感冒剤というものは、熱を下げる薬、鼻水を止める薬、咳を減らす薬などをいろいろと調合してつくった薬で、カゼの症状を軽くしようというもので、カゼそのものを治す薬ではありません。だから、市販のカゼ薬を買うときは、自分のカゼの症状にあった薬を選ぶ必要があります。テレビの宣伝に出る可愛い女の子を頭に浮かべて買ってはいけませんよ。 抗生物質をカゼのときにもらいますが、どうしてですか?ウィルスが体の中にはいると、体の抵抗力がおちて細菌が侵入し悪さをします。扁桃腺が腫れて痛いとき、痰に色がついたとき、蓄膿みたいになったとき、また、咳が長く続くときなど細菌感染があるときに使うのです。 カゼの症状は変わります。カゼ薬を飲んでいて初めのうちは良かったが、段々、咳と痰がひどくてねぇーという経験はありませんか。症状が変われば別の薬を飲む必要があるのです。カゼをひくといつも同じ薬ばかり飲んでいるあなた。ひどくならないうちに、近くかかりつけのお医者さんに相談して、あなたに合ったカゼ薬を選んでもらいましょう!! (平成9年2月掲載) |
「心の病」ってなあに… 大村共立病院 長 岡 和 まだまだ、残暑厳しく暑い日々が続いておりますが、みなさんはいかがお過ごしでしょうか。今回の「みんなの健康」では「心の病ってなあに…と題して、精神科領域の病気についてふれてみたいと思います。まず、「心の病」を語る前に、私たちが何気なく口にしている「心」っていったい何ものなのでしょうか。楽しいことを楽しいと感じ、悲しいことを悲しいと感じる事の出来る「心」とはいったい何ものなのでしょうか。「心」とは紛れもなく「脳」のことです。「心」=「脳」と言われても何となくピンとこないかもしれませんが、私たちの感情・情動すなわち「心」を支配している臓器、それが「脳」なのです。と言うことは「心の病」は「脳の病」と言うことになります。つまり、脳が何らかのトラブルを起こすと「心」が悲鳴をあげてしまうのです。例えば「うつ病」という病気がありますが、この病気は化学物質による脳の連絡網がトラブルを起こすことで発生します。「最近、何となく気分がすっきりしない。」「ため息ばかりが出て、何をやっても楽しくない。」などと気分的な不調を感じたり、「何となく体が疲れやすいし、食欲もなくなって…」「最近、寝つきが悪いし、ぐっすり眠った感じがしない。」などと体の不調や睡眠の問題など色々な症状が出てきてしまいます。「体と心はバラバラではない」と言われますがもともと「心」は脳と言う一つの臓器なのですから当然といえば当然の事なのです。 うつ病でも気分的な不調と一緒に体の不調を感じてくることがほとんどなのです。 例えば頭痛を感じて頭痛薬を飲んでも全くよくならないと思っていたら、実はうつ病で、うつ病を治療したら嘘のように頭痛がなくなってしまうと言う事があるのです。最近、「健康食品」「健康薬品」「健康づくり」などと巷では「健康」と言う言葉があふれていますが、どれをとってみても「体の健康」に関するものばかりのようです。しかし、私たちは、日々の生活の中で「心」を酷使していることを忘れてはいけません。そして、もっと「心の健康」にも関心を持ち、維持していくことが「本当の健康」と言えるのです。 (平成9年9月掲載) |
夏バテ防止へのアドバイス 長崎医院 長 崎 省 吾 バテるというのは疲れてぐったりし、動けなくなることをいいますが、高温多湿の日本では、夏にバテることが多いため、夏バテという言葉が生まれたようです。このような人は体がだるく、疲れやすく、顔色もすぐれず、仕事にも張りがありません。中には体重が減ってくる人もおり、これを夏やせといっています。もっとも夏やせがあっても、元気な人もおり、夏やせがそのまま夏バテというわけではありません。 夏バテの大きな原因に食欲不振があります。夏は健康な人でも胃腸の働きが多少悪くなり、このため食欲も減ってきます。このため、ついサッパリしたものや水っぽいものを多くとりがちです。しかし、こんなものでお腹を満たしていたのでは、体に必要なエネルギーが不足し、スタミナが出ません。 栄養素の中で蛋白質は、体を機関車にたとえると、ボディに当たり、糖質(ご飯、めん類、ケーキなど)と脂肪は、機関車を動かすエネルギーということになります。そこで、夏向きの蛋白質としては大豆製品(豆腐、ゆば、納豆)、魚や貝、鶏肉、鶏卵、それから水分補給という面もあって牛乳などがすすめられます。土用の丑の日にうなぎのかば焼きを食べることなどは生活の知恵ともいうべきで、このとき蛋白質を脂肪の他、ビタミンA、ビタミンB2などをたっぷりとることになります。 夏バテ予防のためにもう一つ大切な食品はビタミンで、以前脚気が夏に多かったのはB1の不足によるものです。胚芽や豆類を欠かさないこと、またストレスに対してはCが有効といわれています。この他夏バテの原因としては睡眠不足や冷房病による下痢、食中毒などがあります。夏は早朝などの涼しい時間を利用し、昼寝を一時間ほどとるといった生活の工夫も大切なことです。 一般に夏バテを防ぐ料理というと、ややもすると油っこい、しかもこってりした料理になりがちですが、毎日このような料理が続いたら、逆に食欲が減退します。そこで、次のようなことに注意して、食欲を増進させ、夏バテを防ぎましょう。 @口あたりがよく、食欲をそそるものを献立にとり いれる。 A蛋白質、緑黄色野菜を充分にとること。 B油を上手に使ってエネルギー不足を補う。 C水分の補給もわすれずに。 D食欲増進に役立つ食品を上手に利用する。 例えば豆腐は冷ややっこで薬味にしょうがやねぎを使う、朝食の前にお茶と梅干しをとるとか、香辛料や酢を上手に使うとかは食欲を増進させ、夏バテ防止の昔からの生活の工夫・知恵だと思います。 以上のようなことを参考にされ、二日酔や夜更かしなどのない規則正しい生活で夏バテを吹き飛ばしましょう。 (平成10年7月掲載) |
白内障について 長津眼科医院 長 津 弘 白内障は俗に「白ぞこひ」とも呼ばれ、目の病気の中では、知名度の高いものと思います。眼球は中に水のつまったピンポン玉のようなもので、つくりの上ではカメラによく似ています。実際に物を見るのは、一番奥にある「網膜」という膜でこれがフィルムにあたります。その前の方、瞳孔のすぐ後ろには、生まれつき誰もがレンズ(水晶体)を持っていて、ピント合わせに大切な役割を果たしています。このレンズが白く濁って透明でなくなると「網膜」まで光がきちんと入らなくなり視力低下を生じます。この状態を白内障といいます。特別な場合に若くしておこる白内障もありますが、大部分は、老化現象の一部としておこる「老人性白内障」です。最初のうちは、少しかすんだり、天気が良い時にまぶしかったりという程度ですが、濁りが強くなると、テレビが見えずらくなったりして日常生活に支障をきたすようになります。 治療は軽いうちは、進行をおさえる点眼薬で様子を見ますが、進行すると手術になります。手術の時期は、以前は見えなくなってからと言われていましたが、手術法の変化(特に手術後厚いメガネをかけるのではなく、目の中に小さなレンズを移植するようになった)や、高齢で運転免許を持っておられる方が増えた事なども関係して、見えにくくなったら手術をするという方向に変わってきました。 また手術のための入院も次第に短くなり、入院を要しない「日帰り手術」も条件が合えば可能です。このように患者さんにとって楽な方向に白内障の治療は進んでいますが、老化とともに視力が低下する病気は白内障の他にもたくさんあります。また一人ひとり、目の状態は異なるので、実際に手術を受けた方の体験談が、全ての方に通用するものでもありません。 白内障を軽く考え過ぎず、また恐がり過ぎず、「目のかすみ」に気づいたら早めに専門医に相談して下さい。 (平成10年1月掲載) |
月経困難症 ウーマンズクリニックナガノ 長 野 純 大 月経開始と同時に、または月経開始の直前から起こる下腹部痛や腰痛、その他の症状が強く、日常生活に差し支えるものを月経困難症と称しています。10歳代後半から20歳代の若い女性に多く、学校や職場を休む理由で最も多いので、社会医学的に重要な疾患です。 月経困難症は単一な疾患ではなく、原発性(機能性)のものと続発性(器質性)のものとに大別されます。原発性月経困難症の原因は、完全には明らかではありませんが、月経困難症のある女性の月経血のプロスタグランジン(PG)が高いこと、また子宮内膜でのPGの生産が高いことなどから、なんらかの理由で子宮内膜で過剰にPGが生産されることが原因の一つと考えられています。PGにより子宮筋が過剰収縮し子宮筋が疎血状態になることが痛みの原因と想定されます。又同時にPGは血中に入り月経困難症に伴う悪心、嘔吐、下痢、頭痛、全身倦怠、情緒不安定などのさまざまな全身症状を引き起こします。 続発性(器質性)月経困難症では器質的疾患を伴っており、これらの疾患が月経痛の原因と考えられるわけです。この器質的疾患として多いものに子宮内膜症、子宮筋腫があり、この両者とも思春期よりの発症が認められ年齢とともに漸次増悪してくる傾向をもっており、早期よりの管理が必要と思われます。 また、頻度は少ないようですが骨盤内の炎症性疾患でも時に月経困難症類似の症状を呈することがあります。 治療は続発性のものはその原因疾患の治療が第一となりますが、原発性のものは鎮痛剤療法、PG合成阻害剤、排卵抑制療法(無排卵周期症では月経困難症が少ないことが知られており、従って排卵抑制剤で無排卵周期を作ることと同時に子宮内膜の増殖を抑えることがPG産生の抑制になり治療につながる)等があります。 (平成10年8月掲載) |
やけどをきれいに治す 貞松病院 貞 松 俊 弘 寒くなると、暖房器具の使用や鍋料理をする機会が増えることから、やけどの患者さんが増えてきます。昔からやけどの民間治療としてアロエを貼る、味噌を塗るなどの治療法がありますが、患者さんの中には、まずこのような民間治療をしてみたがなかなか治らないから病院に来られる方も多いようです。しかし、やけどは治るまでの期間が重要で早く治れば治るほど、きずあとも残りにくくなります。また、関節にあるやけどは関節の動きが悪くなる原因(拘縮)となります。 やけどは医学用語では熱傷と言います。そして熱傷創の深さによって浅いものから1度、2度、3度と3段階に分けています。皮膚が赤くなりひりひりするものを1度熱傷、水疱膜ができるものが2度熱傷といい、この2度熱傷は浅いものと深いものがあります。そして痛みもなく、皮膚が白くなる深いものを3度と言います。この3度は熱傷創が広いものでは植皮という手術をしなければ治りませんし、小さいものでもきずあと(瘢痕)になり、また関節の拘縮をきたします。やけどで問題となるのは浅い熱傷創でも早期に適切な治療、安静がなされないと深くなり3度になるという点です。また熱傷の深さにかかわらず、熱傷面積が広いとショックを起こすことから危険です。 このようにやけどはそのやけどの傷の浅いもの、深いもの、やけどの面積の狭いもの、広いもの、やけどを起こした部位(顔面・手・陰部など)によっても治療法が違います。 やけどしてしまったら、まず水道水の水や氷水で充分冷やしてください。そのときは熱傷創をこすらないようにしましょう。また、小児や老人の場合は、冷やすことによる体温の低下に注意してください。そして、すぐに最寄りの専門医にかかることをお勧めします。 やけどは一日でも早く、なるべくきれいに治すこと重要です。 (平成8年12月掲載) |
整形外科の今昔 貞松病院 貞 松 繁 明 十年一昔と申しますが、整形外科の目には、ここ数年極端な様変りを強く受けています。 三十余年前の開院時は、腰痛の患者さんは、農作業など長い重労働を続けられた結果、脊椎の変形が強く、若い人は、重い物を持ち上げる作業等で起こる、ぎっくり腰でした。手術も骨折が大部分で、大きな骨、例えば太ももの骨や腕の中心部の骨折で、手関節・手指などの複雑骨折の大きな手術が多かった。現在では、大きな骨の骨折よりも、末梢の負傷が多い。これは子供にも見られる。外で元気に遊ばないためか、些細な事で足関節の捻挫、手指の末梢の怪我が多い。しかも、骨折が以前は三〜四週間できれいに骨もつながっていたが、今は骨の出来が悪く、特に、市街地と田舎の格差が大きいような気がする。外で遊ばないためか、食べ物のせいか、はっきりとはしないが、治療しながらふと考えることがあります。 高齢化に伴い、最近は骨粗鬆症の患者が多く、そのため脊椎の圧迫骨折という骨がつぶれる病気や、体重の増加等で膝関節の痛みを訴える人が多くなってきました。骨の量も少しの減り方ではなく、同年齢者の正常値100%に対し、50%以下の患者が多く見られます。その結果、太もものつけねの骨折、脊椎の圧迫骨折、手の関節付近の骨折が多くなっています。更に手足のシビレ、歩行困難があり、自分で食事が出来ない人など、他に疾患がなければ80〜90歳近くでも手術を行う場合があります。最高齢で102歳の骨折の手術を行いました。 しかし、高齢者が手術で良くなっても、核家族等々家庭の事情で帰れないケースも多くでています。医療は高度になり、これからはこの様なケースが急速に増えると思われますが、この対策として高齢者のアフターケアーの必要を痛感します。 (平成10年6月掲載) |
皆さんお元気ですか 田崎医院 田 崎 英 秋 皆さんお元気ですか。新緑萌えるような、躍動の季節です。 でも私どもは、思いがけなく病気になって、生命のリズムを乱されたり、年齢をかさねるうちに成人病になったり、さらに老化現象が進行して活力が低下してきます。これらの苦痛状態から抜け出すために人々は、医療の助けを求めて病院を訪れます。ところが、患者さんが期待していることと医師の対応が、あまりにもずれている場合があります。 それは、患者さんが訴えている個々の病状を、医師側が医学的常識にのみ基づいて判断をしたり、病状の背景に潜んでいる家庭や職場での問題点、ストレスなどを無視しているからではないかと思います。 私どもは、これらに注意して病気の全体像をはっきり見きわめて、最良の状態に治すように正確に素早く対処したいと考えております。医者に縁のない人生の方がよりよいことに相違ありませんが、羞恥心や恐怖感、もしくは仕事の忙しさにかまけて、一時の受診をちゅうちょしたことにより思わぬ方向に病気が展開、進展したときに致命的にさえなることも事実です。身体に何か不安がありましたら、遠慮なくいつでも御相談ください。 ふだんから、気安く相談しやすいようにかかりつけの医師を1人から2人決めておくと安心でしょう。 (平成8年6月掲載) |
「キレるこども達」と「戸惑う大人達」 大村共立病院 長 岡 和 ここ数年、新聞を開けば「平成大不況、未だ底が見えず」等と不景気な話題ばかりが紙面を賑わし、これらと並んで「キレルこども達」「学校崩壊」「いじめ」等の言葉が目立ちます。今回はこの「キレルこども達」について一人の精神科医としてふれてみたいと思います。今、大人達は「今のこども達は何を考えているのか分からない」「今のこども達は何をしでかすか分からない」更には「今のこども達は怖い」とまで言います。果たしてそうなんでしょうか。私が思春期を過ごした時代を振り返ると「校内暴力」「集団リンチ」「暴走族」等数多くの問題が叫び始められた頃でした。もっと年輩の方々の時代を振り返れば「学生紛争」「安保紛争」等、その時代に沿った「思春期の葛藤とそのエネルギーの爆発」があった様に思えます。政治的色調を持った「学生紛争」「安保紛争」等がいわゆる「意味のある行動」であって「校内暴力」「暴走族」等が「意味のない行動」なのでしょうか。今、まさにその時期を迎えているこども達が起こす様々な行動が過去のそれらと大きく違うのでしょうか。私にはこの時代に思春期を迎えた「こども達の叫び」であり、「思春期の葛藤とそのエネルギーの爆発」の様に思えてきます。問題はそれを取り巻く社会と大人達の戸惑いにあるのではないでしょうか。時代の流れの中で日々、進化し、突然変異を繰り返す「思春期の葛藤とそのエネルギーの爆発」の形に私達大人が戸惑い、傍観しているのが現状でしょう。私が長崎県中央児童相談所の嘱託医を務めるようになって今年で3年目を迎えます。児童相談所では多くの「キレルこども達」とその対応に「戸惑う大人達」に出会う事が出来ます。児童相談所では、この様なケースの間に立ち、相談を受けたり、時にはそのこどもの将来を考えて、一時的に児童自立支援施設や児童養護施設等への入所等の処遇決定を行っています。即ち、「キレルこども達」と「戸惑う大人達」という二者関係の間に立ち、三者関係を作り出すことでその対応と解決の糸口を見つけ出す事になります。行き詰まった二者関係を打開するためには、時として第三者の介入によってその対応と解決の糸口を見つけ出す事が可能となることがあります。第三者(学校、公共機関、病院等)を利用することによって、こども達の「思春期の葛藤とそのエネルギーの爆発」に適切に対応する事が可能となってくる事があります。また、こども達は必死で叫びながら、その心は傷つき、笹くれ立っています。精神的ケアを施してあげる事を大人達は忘れてはいけません。併せて、思春期は様々な精神疾患の好発時期でもあり、決してこれらを見逃すことなく、必要であれば薬物治療や精神療法(カウンセリング)を行うことも大切です。適切なタイミングで、適切な第三者の介入を行えれば「キレルこども達」と「戸惑う大人達」のそれぞれの苦しみが早期に癒される様に思えてきます。 (平成11年5月掲載) |