「骨粗鬆症」の話し 牟田クリニック 牟 田 義 人 人は生きていく限り骨を老化させていきます。骨の老化現象が、骨折を起こし易いほどまで進んだ状態を「骨粗鬆症」と名付けます。「鬆」はスウとショウとも読みます。髪が松葉のように「あらく」みだれているという意味でしょうか。大根や人参の中身に「す」ができてスカスカになった状態を思ってください。もともとの骨の数が減るのではありません。個々の骨の量(密度)が減少するのです。人間の骨量は、40歳が最高で、年を取るにつれて減少し、女性は70歳台、男性は80歳台を過ぎてから、骨量は7割ぐらいまでに減って、骨粗鬆症の状態になります。老化現象の発現、速度、程度は人さまざまですから、骨粗鬆症に早くなる人、遅れてなる人、程度の軽い人、重い人によってまちまちです。よほどの事がない限り、多くの人が80歳を越えて生きられるようになった日本の女性にとって、骨粗鬆症は大きな課題であります。その予防・対策としては、若いときから骨を丈夫にしておくことです。 そのためには、日ごろより食事で、カルシウムを豊富にとる。適度の日光浴をすることでビタミンDを体の中にたくさんつくるようにする。適度な運動をして骨や筋肉が強くなるようにするなど、昔からの言い伝えどおりです。老いてはなおさらに必要な事柄です。老人の骨は弱くなっておりますので、転ばぬように、転ばぬように気をつけましょう。 (平成8年7月掲載) |
インフルエンザ・ワクチンの効果 野口内科こども医院 野 口 哲 彦 普通の風邪の場合には数日以上の潜伏期間があって、身体の中でゆっくりと進行するために、咳、鼻水、鼻づまりといった身体の防衛機能が発揮される初期の症状があります。 これに対し、インフルエンザでは感染してから(人の身体の中に入ってから)1〜2日の間で急速にウイルスが増殖するので身体の応戦体制が間に合わず、風邪の初期症状が出ないままに突然の高熱で発症し急激に悪化します。また、無防備な(免疫がない)状態では、感染力は非常に強くそして速く、そのために爆発的に流行します。これがインフルエンザが恐れられる理由です。 予防接種法改正に伴い、インフルエンザが任意接種となったために接種率が低下して流行したのかどうか、理由は明らかではありませんが、平成6年から7年にかけて全国的に流行しました。このときのインフルエンザでは、脳炎、脳症が急激に進行し死亡したり、後遺症を残した人が少なくありませんでした。長崎県では5人以上、北海道では8人以上、熊本県や宮崎県でも数人が亡くなっています。インフルエンザはかかってからでは間に合いません。できることなら、感染したいように予防対策を講じることのが得策ですが、そのためにはワクチン接種しか方法はありません。 インフルエンザのワクチン接種は社会全体の流行を抑えると判断できる十分なデータがなく、また流行ウィルスの型が捉えがたくて、ワクチンの構成成分の決定が困難であるという特殊性を有しています。そのために、このワクチンの予防効果については、誤って低い評価しか受けていなかったように思います。ところが、前に述べた死亡した人のほとんどは1回もワクチンを受けていませんでした。欧米諸国ではこのワクチンが、個人の発病防止や重症化防止の効果が認められるとして、乳幼児や老人には積極的にワクチン接種が行われています。 一旦インフルエンザが流行すれば、多くの乳幼児や老人が犠牲になります。このような悲惨なことが起こらないよう多くの人が、ワクチンを接種されるように願っています。 (平成9年1月掲載) |
健康と食生活 与那城医院 与那城敏夫 昔、王様は、不老長寿のクスリを探し求めたという。今日、多くの人々は、健康で健やかな生活を夢見て、競って、健康食品といわれる物にむらがる。昔も今も人間の心、願望は全く同じである。その心をゆさぶるかのように、続々と、健康食品と名のつく商品が出現し消えていく、その数、数百種ともいわれる。 さて、健康ですこやかな生活とは、とりもなおさず、いかに成人病をさけ得るかと言う事にほかならない。三大成人病といわれる癌・心臓病・脳卒中などは、いずれも食生活・ライフワークいかんに関わり、それに根ざしている。現代は、飽食の時代、車時代とも言われ、昔と違い、世界中の食物が身近にあり、容易に買い求めることができる。そのため、人々は好きな物を好きなだけ食し、嫌いな物には手も出さなくなった。同時に、運動の基本である、歩くという事をやめてしまった。その結果、栄養過多となり、肥満、高コレステロール、糖尿病、動脈硬化となる。いずれも成人病の原因となる。また好きな物しか食しない事になり、ミネラルなどに不足を来す。これが現在問題になっている、カルシウム不足、骨粗鬆症の原因である。 以上、おわかりのように、成人病を予防するためには、まず、自分の食生活、日常生活を見直す事からはじめなければならない。取りすぎてはいないか、バランス良く取っているか、好き嫌いなくとっているか、これらを検討し、減らすべきは減らし、不足分はこれを補う。さらに、これに適度な運動が加われば、健康ですこやかな生活が、約束されるはずである。その事をせずに、ただただ健康食品に飛びついても、全く意味のない事である。 実際には、昔から言われている腹八分、好き嫌いのない食生活を実行する事である。 (平成9年12月掲載) |
40歳すぎたら定期検診を 澤田胃腸科内科医院 澤 田 一 彦 文明の高度化と高齢化社会の出現によって癌は増加の一途をたどっていますが、部位別に見ると増えた癌、減った癌があり、変化を見せています。 かつて日本人の死亡原因の第一位は結核で、それが昭和26年には脳卒中にかわり、昭和56年ついに癌が第一位となり、それ以来第一位を独走しています。現在総死亡者数の4人にひとりが、癌で亡くなっています。癌は色々な部位より発生しますが、男性は今までは胃癌の死亡率が非常に高かったのですが、最近胃癌は減少し、肺癌、大腸癌、肝臓癌が増加し、女性では胃癌、子宮癌が減少傾向にありますが、反対に肺癌、大腸癌、肝臓癌、乳癌は増加しています。こういった現象は、日本人の食事の欧米化が進み、生活環境、喫煙などによる変化と医学の進歩により早期癌が発見されるようになったからです。現在の時点では、癌で命を落とさないためには、まず大切なのは「早期発見」で、外科的手術によって摘出できる時期に発見すれば治る可能性が十分にあります。今、大村市の健康増進課でも総合健康診査、すなわち基本健康診査(昨年の受診率 25・6%)、胃癌検診(18%)、肺癌検診(28%)、大腸癌検診(21・4%)、子宮癌検診(17・2%)、乳癌検診(16・1%)を指定された開業医で行っておりますが、受診率がまだ低いようです。 40歳すぎたら、自覚症状がなくても1年1回検診を受けることが大切です。特に、胃癌、大腸癌、乳癌、子宮癌などは、検診によって早期発見されやすい癌です。これらは、発生頻度も高いのですが、早期に発見すれば、まず、治すことができる癌ですから、ぜひとも定期検診を受けるようにしてください。 (平成9年9月掲載) |