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2008年12月1日掲載

逆流性食道炎


 「胸焼けがする」「酸っぱいものや苦いものがのど元に上がってくる」といった症状で悩んでいる人は結構いるのではないでしょうか。このような症状の原因の一つである「逆流性食道炎」について説明したいと思います。

 この病気は胃から食道への逆流を防止する機能が低下し、胃液や食物が食道に停滞するのが原因と考えられています。停滞した胃酸など強い酸によって食道の粘膜に炎症が生じ、胸焼けや胃の痛みなどの症状が現れます。脂っこいものをよく食べる人やストレスの多い人、肥満の人、高齢者に多くみられるといわれています。

 胸の痛みやせき、たんなど胸の病気と似た症状を訴える人もいて、他の病気と間違われる場合があるので注意が必要です。逆流性食道炎によるせきに、通常のせき止めは効果ありません。これらの症状がある人はぜひ一度、消化器科、胃腸科を受診することをお勧めします。

 逆流性食道炎の診断は、主に内視鏡を使って食道粘膜の傷やかいようなどの炎症を直接観察して行います。ただ、この病気の中には食道粘膜に異常を認めないこともありますので、自分の症状を詳しく医師に伝えることも重要になります。最近、食道がんとのかかわりが注目されています。逆流性食道炎と診断された場合は定期的に内視鏡検査を受けるようにしてください。

 ちなみに内視鏡検査というと、苦しい検査というイメージを持っている人が多いと思います。しかし、最近は直径五ミリ程度の極細の内視鏡を鼻から挿入する「経鼻内視鏡」による検査が開発され、当院を含め一般のクリニックにも徐々に普及しています。口から挿入する内視鏡に比べ、吐き気やのどの痛みなどの苦痛が軽減されており、以前に比べると随分楽に検査が行えるようになっています。

 逆流性食道炎の治療は主に薬物療法になります。まず胃酸の分泌を抑える薬が第一選択となり、粘膜保護剤、胃の運動を良くする薬を使うこともあります。薬を数日間飲めば通常、ほとんどの自覚症状は良くなりますが、それで食道粘膜の炎症が治ったというわけではありません。決して自己判断で服用を中止しないでください。

 薬物療法以外では、生活習慣の改善が重要になります。日常生活では次のことに気を付けてください。

 まず食事です。一度に食べ過ぎないようにし、脂っこいものや香辛料、かんきつ類など酸味の強い食品は控えるようにしてください。

 アルコールやたばこなどの嗜好(しこう)品もよくありません。食後すぐ横になったり、重たいものを持ったり、ベルトやガードルを強く締めることも控えてください。肥満や便秘は症状悪化の原因となりますので、改善に努めましょう。

 また、逆流性食道炎は再発しやすい病気で、長期間の治療が必要となります。薬の服用方法などを、主治医の先生とよく相談して治療されることをお勧めします。


(西彼時津町久留里郷、藤本クリニック 院長 藤本 正博 )

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