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2008年12月14日掲載

生活習慣病と食道・胃・大腸がん


 日本人の最近五十年間の食習慣の変化を見ると、摂取総カロリーは変化していませんが、動物性タンパクと脂肪、飲酒量の増加、炭水化物、食塩、食物繊維の減少といった変化がみられます。また、日常生活における運動量が減少し、夜間睡眠前に食事を取ったり、睡眠時間が減少したりするなど大きな生活習慣の変化も起こっています。

 このような変化は男性、特に中年男性での、女性では高齢女性での肥満の増加の原因となっています。そして、がんとも深くかかわっている可能性があります。

 食道がんは喫煙と飲酒がその発がんに強く関連することが知られています。飲酒については、以前はすぐに顔が赤くなって飲めなかったのに訓練で飲めるようになった人は特に用心が必要です。

 高タンパク食、魚摂取の減少、食塩摂取の減少、胃の中にすむヘリコバクター・ピロリ菌(以下ピロリ菌)の感染者の減少のために日本人の胃酸を分泌する能力は高くなっています。また、高脂肪食、肥満などは、胃酸が食道に逆流しやすくします。

 このため胃酸が食道に逆流する人は増加して人口の10−20%程度に認められ、そのうち30−40%はびらんや潰瘍(かいよう)を伴う逆流性食道炎と報告されています。胃酸の逆流によって、食道の下部にできる腺がんが今後増える可能性があります。

 胃がんの大きな要因として、ピロリ菌の感染があります。ピロリ菌は胃潰瘍、十二指腸潰瘍の原因にもなっていますが、最近は衛生環境の向上で若い人では感染者が減っています。ピロリ菌に感染している人の場合、塩分の取りすぎは胃がんになりやすくします。近年、日本では食塩の摂取量も減っていることから、胃がんは全体として減ってきています。

 しかし、胃酸分泌の増加に伴い、胃の入り口の噴門部領域のがんは増えてきています。

 大腸がんは急速に増加しています。直腸がんを含めると、女性は既に胃がんをしのいでいます。食習慣などの環境因子が大きいがんと考えられており、増加の原因としては「生活の欧米化」が疑われています。

 大腸がんになる可能性は肉やアルコール摂取によって増大することが知られていますが、食事内容のほかに肥満や運動不足も発生しやすくします。また、肥満による糖尿病も大腸がんやその前がん病変である大腸腺腫になる可能性を高くすることが知られています。

 食道、胃、大腸のがんの予防法としては野菜や果物の摂取も有効とされています。食習慣や肥満、そして運動不足の改善により生活習慣病だけでなく、がんも予防できる可能性があります。

 食道がん、胃がん、大腸がんも早期の浅いがんであれば、体に負担の少ない内視鏡手術での治療が可能です。がんになりそうな危険因子がある人は、胃内視鏡や大腸内視鏡などの検査を受けておいた方が安心です。

 忘年会シーズン真っ盛りですが、飲み過ぎ、食べ過ぎに注意し、適度な運動を心掛けましょう。


(長崎市油屋町、西田内科胃腸科医院 医師  西田 義之 )

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