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2009年2月2日掲載

新型インフルエンザ対策


 これまで十年から四十年の周期でパンデミック(世界的な大流行)を起こしてきた新型インフルエンザ。最も新しいタイプのインフルエンザである香港かぜの出現から既に四十年が経過しています。

 今一番危惧(きぐ)されているのは、現在東南アジアを中心に猛威を振るっているH5N1鳥インフルエンザがいつ人から人に容易に感染する新型インフルエンザとなってパンデミックを起こすか、ということです。新型インフルエンザがH5N1鳥インフルエンザから起こるかどうかは確定できませんが、例えH5N1以外のウイルスが原因となるにしてもパンデミックは「いつ」かは分からないが「必ず」起こる、ということです。

 新型インフルエンザウイルスに対しては世界中の誰も免疫を持っていないため、いったん発生するとその感染は燎原(りょうげん)の火のようにあっという間に広がります。厚生労働省の試算では、国内の患者数は千三百万人から二千五百万人、死亡者は六十四万人となっています。これを本県に当てはめると医療機関を受診する患者数が十六万人から三十万人、死亡者は最大で約八千人に上る見込みです。

 政府は新型インフルエンザ対策行動計画を立て、昨年十一月にはこの改定案を発表しています。パンデミックと他の災害時との大きな違いは、パンデミックでは他の地域からの救護・援助活動が望めないということです。世界中が、日本中が、自分の地域のことで精いっぱいですので、個人や事業者、自治体が自己責任で対処しなければなりません。

 市民に最も必要な心構えは昔からの言葉どおり「敵を知り、己を知らば、百戦危うからず」「備えあれば憂いなし」です。まるでSF小説のような、恐怖をいたずらにあおる報道におびえる必要はありません。ウイルスや病気に対する正しい知識と正確な情報を基に、しっかりした判断力を持って対策を行うことが大事です。

 まずは不要・不急の外出の自粛、正しい手洗いやうがい、消毒、食料や日用品・医薬品の備蓄などが大切です。このような対策はパンデミックに限らず、家族内や保育所などであっという間に広がる嘔吐(おうと)下痢症にも、また、感染症以外の大水害や大地震などの災害対策にも通じるものです。

 パンデミックが起こればほかからの援助が期待できないわけですから、対策準備を通じ家族や地域コミュニティーのきずなを深める良い機会にできるかもしれません。

 長崎市医師会は七日午後二時から同市栄町の市医師会館(電095・818・5511)で、市民健康講座「新型インフルエンザ−その正しい知識と市民の対策」を開きます。鳥インフルエンザと新型インフルエンザとの関係、ワクチンや抗インフルエンザ薬、パンデミック対策などについて写真や図をたくさん使って分かりやすく解説します。マスクや消毒液などの展示もあります。これを機会にぜひ新型インフルエンザについて一緒に勉強しましょう。


(長崎市家野町、長崎市医師会 理事  井手内科クリニック 院長  井手 政利)

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