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2009年4月6日掲載

学校検尿について


 間もなく新学期が始まります。楽しく充実した学校生活を過ごすためには、心身の健康が大切です。四月には身長・体重測定、内科健診とともに、学校で尿を集め検査する、いわゆる「学校検尿」が行われています。腎臓の病気は自覚症状に乏しく、しばしば病気がかなり進行してから発見されることがあります。しかし、蛋白(たんぱく)尿や血尿を調べることによって早期に病気を見つけることができます。

 学校検尿は腎臓病の早期発見を目的として始まりました。その後、尿糖や白血球尿の検査が追加され、それぞれ糖尿病、尿路感染症の早期発見も可能となりました。

 尿は食事や運動などの影響を受けやすいので、自宅で尿を採る際には注意が必要です。検査前日は激しい運動を避け、食べ過ぎないようにしてください。

 その上で前夜は入浴して外陰部を清潔に保ち、寝る前に排尿した後、朝起きて最初の尿(早朝尿)を採ります。尿道の分泌物や、年長男児では精液の混入を避けるために排尿途中の尿(中間尿)を採ります。年長女児では生理血の混入を避けるために生理中および、その後の三−四日は検査を避けます。このような正しい採尿が正確な診断につながります。

 検査ではまず小、中学、高校生全員の早朝尿について、蛋白尿、血尿、尿糖、一部は白血球尿の有無を調べます。これを一次検尿といい、そこで異常が見られた場合に本当に病気があるかどうかを判断するために二次検尿を行います。あらためて早朝尿と、登校後に学校で尿(学校尿)を採り、違った条件で調べます。これにより、身体を動かしたときに蛋白尿が見られるが、安静にすると消えてしまう「体位性蛋白尿」といわれる、病気ではない蛋白尿が見分けられます。

 二次検尿でも異常が見られれば、病気の可能性が高くなります。二次検尿の際に提出していただいた検尿アンケートと尿異常の程度を総合して、精密検査が必要かどうかを判定します。その結果は学校を通じて保護者に連絡されます。尿異常の程度が軽い場合は、校医やかかりつけ医で年に数回、尿の経過を見てもらうことになります。

 通常わずかな蛋白尿や血尿だけなら食事や運動制限は必要ありません。血尿や蛋白尿がはっきりしたり、血尿と蛋白尿がともに認められたりするときには腎臓病の可能性が高くなりますので精密検査が必要です。尿糖の陽性者も糖尿病かどうかを判定するために精密検査が必要ですので、小児科専門病院を受診するよう連絡があります。

 いずれにせよ結果を安易に考えて放置したのでは、せっかくの検査も意味がありません。異常があればなるべく早く、少なくとも夏休み前には病院を受診して、適切な診断、治療、生活管理を受けてください。腎臓病や糖尿病は長期の経過観察や治療が必要です。学校、保護者、医師が協力して、病気だけでなく、子どもたちの健やかな成長・発達を支えていくことが大切です。


(長崎市竹の久保町、ながすえ小児科医院 院長  永末 俊郎)

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