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2009年4月20日掲載

慢性閉塞性肺疾患(COPD)


 坂道や階段を上るときに息切れしたことはありませんか。年配の人であれば「年のせい」と思いがちですが、慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)かもしれません。

 COPDは喫煙習慣との関連が深く、「たばこ病」とも呼ばれます。空気の通り道である気道が徐々に狭くなったり、肺の中で酸素と二酸化炭素を交換している「肺胞」が壊れて気道がつぶれやすくなります。そのため息切れしやすくなります。今後、世界的に増加し、二〇二〇年には死因の第三位になると推測されています。

 現在、わが国では十三万人を超える在宅酸素療法患者がいますが、約半数はCOPDによる呼吸不全が原因です。ただ、COPD患者は約五百三十万人と推定されていますが、その10%程度しか病気として正式に診断されていないことになり、大きな問題です。

 どうして病気として認識されないのでしょうか。理由としては▽息切れが出始めた時に「年のせい」と思って受診しない▽医療機関にかかっていても自覚症状が乏しい段階では積極的に呼吸機能検査などの精査が行われない▽健康診断で指摘されても受診する率が低い−といったことが挙げられます。

 COPDの代表的なものに慢性気管支炎、肺気腫があります。

 慢性気管支炎は慢性のせきやたんが見られ、気道感染を起こしやすいという特徴があります。感染時には抗菌薬による治療が必要ですが、せき、たんが少ない場合に医療機関を受診する人はやはり少ないようです。

 肺気腫は肺胞が徐々に壊れていく病気で、坂道を上ったりすると息切れしやすくなります。ですが、「年のせい」と思って受診しなかったり、かかりつけ医に相談しなかったりする人が多いのが現状です。

 COPDの気道の閉塞性変化は、肺活量などの呼吸機能検査で調べられます。補助診断として胸部エックス線検査やCT検査も有用です。

 発症と進行の予防には禁煙が重要です。喫煙者は禁煙外来などを活用してたばこをやめることが推奨されますし、受動喫煙を避けることも大切です。感染予防にはワクチン接種(インフルエンザ、肺炎球菌)が推奨されます。

 治療薬には抗コリン薬、β(ベータ)2刺激薬、テオフィリンなどの気管支拡張薬、ステロイド薬、β2刺激薬とステロイド薬の合剤などがあり、重症度やぜんそくの合併を考慮して使用します。漢方薬を併用することもあります。昨年、長時間作用型の抗コリン薬(吸入薬)を併用することで呼吸機能が改善し良好な日常生活が得られることや、死亡率が低下することが報告されています。重症度が進むと酸素療法、人工呼吸、外科療法も考慮します。

 薬物療法と並行して、呼吸リハビリテーションや栄養面での改善に取り組むことで日常動作が改善し、自信の回復にもつながります。息切れを感じたら、かかりつけ医、呼吸器内科医に相談しましょう。

(長崎市銅座町、まさき内科呼吸器クリニック 院長  真崎 宏則)

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