>>健康コラムに戻る

2009年5月18日掲載

正常眼圧緑内障

 目の病気の中で緑内障は、白内障と並んで多いものの一つで、日本人の失明原因の第一位に挙げられます。

 以前は緑内障と言えば、眼圧(眼球の内側からの圧力)が何らかの原因で高くなるために、視神経(見たものを脳に伝える神経)が圧迫されて障害され、視野(物の見える範囲)が狭くなる病気であると考えられていました。

 ところが最近になって、眼圧は正常範囲内(10−20mmHg)にあっても、眼圧の高い緑内障と同じように、視神経の障害が進行し、視野が狭くなる緑内障の存在が分かってきました。

 これが「正常眼圧緑内障」です。原因はまだはっきり分かっていませんが、視神経が耐えられる眼圧に個人差があることや、視神経の血液循環が悪いことなどが影響しているのではないかと考えられています。

 最近の調査によれば、四十歳以上の日本人のうち十七人に一人が緑内障であり、さらにその半数以上が正常眼圧であることが明らかになりました。このように正常眼圧緑内障はありふれた病気であるにもかかわらず、治療を受けている人は約二割にとどまります。残り約八割は緑内障が未発見のまま放置されているのです。

 これは実際に視野障害が起きていても、両目で視野を補い合うために自分で気付かない場合が多いことや、末期になるまで視力が良好に保たれることに起因すると思われます。

 つまり正常眼圧緑内障は眼圧が正常であり、初期段階ではほとんど自覚症状がないため、病院や診療所の眼科で眼底や視野、網膜神経繊維層の厚さなどの検査をしない限り、早期に発見するのは困難です。

 どんな人が正常眼圧緑内障になりやすいかについてもまだ十分に分かっていません。現段階では▽家族に緑内障の人がいること▽年齢が高いこと▽低血圧や糖尿病であること▽強度の近視であること▽血液循環が悪いこと−などが危険因子と考えられています。

 正常眼圧緑内障の治療に関しては、まず点眼薬でその人の視神経が耐えられる範囲内の眼圧に下げる方法が一般的です。この時、下げなければならない眼圧の程度に応じて、作用機序(作用・効果を及ぼす仕組み)の異なる数種類の点眼薬を用いることもあります。次に薬物治療をしても視野障害が進行する場合には、レーザー治療や外科的手術が行われます。

 しかしながら、これらの方法はあくまで緑内障を進行させない方法であり、一度失われた視野は回復しません。早期に発見して、早期に治療を開始することが最も大切です。自分では気付きにくい病気なので、時々、片方の目で見てみて視野が欠けていないかチェックしたり、人間ドックで眼底検査を受けたりすることも必要です。

 四十歳を過ぎたら、一度は眼科で緑内障の検査を受けられることをお勧めします。


(長崎市城山町、そうだ眼科 院長  早田 義典)

>>健康コラムに戻る