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2009年6月1日掲載

大腸がん検診

 大腸がんの患者数は年々増加し、体の部位別で見ると女性で第1位、男性でも第2位を占めるまでになっています。日本人の食生活が伝統的な和食から、脂肪分の多い肉食中心に変わり、食物繊維の摂取が減ったことで、便秘を起こしやすくなり、便に含まれる発がん性物質が大腸がんの引き金になっていると考えられています。

 一般に、早期大腸がんは症状がないのが普通です。進行がんになると、肛門出血、便線狭小(便が細くなる)、便通異常(便秘と下痢が交代で起こる)などの症状が現れることがあります。

 大腸がんのリスクは50歳すぎてから増加し始め、高齢になればなるほど高くなるのが特徴です。多くの大腸がんは、腺腫という種類のポリープから発生すると考えられていますが、ポリープを経ずに正常粘膜が直接がん化する場合もあります。

 大腸がんを見つける方法としては(1)便潜血検査(2)S状結腸内視鏡検査(3)S状結腸内視鏡検査と便潜血検査の併用法(4)全大腸内視鏡検査(5)注腸エックス線検査(6)直腸指診−があります。

 国立がんセンターの大腸がん検診ガイドラインでは、この六つの方法のうち(1)を、最も推奨する「グレードA」としています。内視鏡を用いる(2)、(3)、(4)の方法と、造影剤(バリウム)を腸に入れてエックス線撮影する(5)の方法は検診により死亡率を減少させる根拠はあるものの無視できない不利益があるとして、集団検診ではなく、個人対象の人間ドックなどで行うほうが良い「グレードC」としています。

 (6)は死亡率減少効果がないとして検診の方法として勧められない「グレードD」となっています。

 便潜血検査と全大腸内視鏡検査の具体的な方法と利点、欠点について説明しておきます。

 便潜血検査は、便の中に大腸がん表面からの微量な出血がないかを調べます。内視鏡検査や注腸エックス線検査よりも診断精度は劣りますが、安全・簡単・安価で、一度に多くの人の検査が可能など、検診方法として非常に優れた特徴があります。しかし、便潜血陽性となった場合はその原因検索のために、別途、全大腸内視鏡検査などによる精密検査が必要になります。

 全大腸内視鏡検査は診断精度が極めて高いのが特徴で、疑わしい病変が見つかった場合にその場で組織が採れることが最大の利点です。一定の頻度でがん化する恐れのあるポリープの切除も可能で、検診・診断・治療を兼ねた優れた検査法といえます。

 しかし、検査の前処置として1・8〜2リットルの腸管洗浄液を飲んで便を全部出す必要があります。そして、検査に伴う苦痛や、腸管が破れるなどの偶発症が起こることがあるのが欠点です。

 大腸がんは、定期的に検診を受けることによって早期に発見できます。大腸がんの発見が遅れて生活の質(QOL)を落とすことのないよう、40歳を迎えたら定期的に大腸がん検診を受けましょう。

(長崎市小江原2丁目、小江原中央病院 内科医師  神谷 直昭)

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