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2009年7月6日掲載

薬疹について

 薬疹(やくしん)とは内服、あるいは注射した薬の影響で皮膚や粘膜にできる発疹(ほっしん)のことです。すべての薬は薬疹を起こす可能性がありますが、抗生物質、解熱鎮痛剤、高血圧治療薬、抗けいれん薬、腫瘍(しゅよう)用薬は比較的原因となりやすいとされています。

 薬疹にはいろいろな種類の発疹があります。代表的なものは、「はしか」のような赤い発疹が体の広い範囲に多発する紅斑丘疹型薬疹や、薬を飲むたびに同じ場所に円形の赤紫色の発疹ができる固定薬疹などです。

 薬疹は多くの場合、原因となる薬を中止し、治療するとすみやかに軽快します。しかし、中には強い全身症状を伴い激しい皮膚の変化を来す重症薬疹もあります。最近では、ウイルスが関係する薬剤性過敏症症候群(DIHS)という重症薬疹があることが分かってきました。

 DIHSは高熱と臓器障害を伴って赤い発疹が急速に拡大し、原因の薬を中止しても2週間以上も症状が続きます。乳幼児の突発性発疹症の原因であるヒト6型ヘルペスウイルスは成人になっても体の中に残っており、DIHSでは薬の影響でこのウイルスが再び増殖し、そのために症状が長く続くと考えられています。原因となる薬は限られ、抗けいれん薬が圧倒的に多いことが知られています。

 次に紫外線が強いこの時期に増える薬疹に、光線過敏型薬疹があります。薬を使用しただけでは何も起こりませんが、日光に当たると顔や首、腕など露出している皮膚だけに発疹が出るのです。

 原因としては一部の抗生物質や解熱鎮痛剤によるものが多いようです。最近は、高血圧の薬で光線過敏を起こしやすいサイアザイド系降圧利尿剤と他種の降圧剤の配合剤がよく使われていて、その薬による光線過敏症も出てきているようです。このような薬を内服中に日光に当たったところだけが赤くなったり、かゆみが出たりしたときは主治医や皮膚科医に相談しましょう。

 また、正確には薬疹ではありませんが、湿布薬による光線過敏症も春から夏によく見られます。
 ケトプロフェンという鎮痛消炎剤の湿布薬は、張った部分を日光に当てると、腫れや水ぶくれを伴う強いかぶれを起こすことがあります。この場合、使用中止後も1カ月間は日光に当たるたびにかぶれるのですが、湿布を張ったことを忘れている人も多く、いきなり四角い形に真っ赤にかぶれてびっくりし、来院されることもあります。

 このような湿布薬の外袋や説明書には光線過敏を起こすことがあると書かれています。日光に当たるところに湿布を張る場合は、必ずこの注意書きがあるかどうか確認することが大切です。該当する場合、日光に当たる部分にはできるだけ張らず、もし張ったら使用中および使用後1カ月はサポーターなどで厳重に遮光する必要があります。

 この薬は市販薬としても売られており、ローションやゲルなどの塗り薬もありますので、注意してください。

(西彼時津町浦郷、つかざき皮ふ科 院長  塚崎 直子 )

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