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2009年7月20日掲載

男性更年期障害について

 男性の更年期障害は最近まであまり注目されることのなかった分野でしたが、女性と同様、多数の男性がその障害に苦しんでいることが明らかとなりつつあります。いまだその病態について十分明らかでない面もありますが、今後この領域の研究が盛んになると思われます。

 主な症状としてはうつ傾向、いらいら、不安、疲れやすいなどの精神症状、睡眠障害、発汗、ほてり、動悸(どうき)、頻脈、肩凝り、目まいなどの身体症状、男性機能の低下などが代表的なものです。

 原因は男性ホルモンであるテストステロンの分泌量の低下によると考えられていますが、男性の場合は女性の閉経のように性ホルモンが急激に低下せず、緩やかに変化するため症状の発現が分かりにくいことが少なくありません。受診してもはっきりと診断がつかないことも多く、複数の医療機関を転々とする人もいらっしゃいます。

 当院では次に挙げる九つのチェック項目のうち、おおむね三つ以上該当する場合を精査の対象とし、十分な問診とともに男性ホルモン量の測定を行い診断しています。
 チェック項目は、
  (1)男性機能の低下がありますか。
  (2)元気、活力がなくなってきましたか。
  (3)体力または持続力の低下がありますか。
  (4)身長の低下がありますか。
  (5)日々の楽しみが少なくなったと感じますか。
  (6)悲しい気分、怒りっぽいですか。
  (7)運動をする能力が低下したと感じていますか。
  (8)夕食後、眠たくなりますか。
  (9)仕事の能力が低下したと感じますか−となっています。

 治療としては、ホルモンを補充する注射剤、飲み薬などがありますが保険の適応となっているのは注射剤だけです。男性ホルモンは本来、体の中にある物質ですから、体外から補充しても大きな心配はありません。

 一部でこの注射剤が前立腺がんを誘発、進行させるのではないかと懸念されています。今のところ報告例はありませんが、明らかに前立腺がんと診断されている場合には注射剤の使用は避けた方がよいと思います。

 治療期間は半年間から一年間を目安とし、それでも症状の改善が思わしくない場合、ホルモン補充を継続します。ほかに漢方薬や、精神不安が強い場合は向精神薬の併用などを行うこともあります。カウンセリングや生活指導の成果もありますが、治療効果は比較的良く、著しく改善する例も珍しくありません。

 男性更年期障害はそれ自体は直接生命を脅かす病気ではありませんが、積極的に治療をすることによって改善し、生活の質(QOL)の向上、日々の精神の安定、また高血圧や糖尿病などの生活習慣病の予防にも役立ちます。

 このように治療が可能な病気ですので、先のチェック項目で少しでも該当する項目があるときや不安を感じるときは、泌尿器科専門医の受診が望ましいと思います。


(長崎市鶴見台1丁目、原口医院 院長  原口 千春)

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