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2009年9月7日掲載

腰部脊柱管狭窄症(原因と症状)

 腰を伸ばして歩いたり、立ったりしていて、足がしびれたり、痛くなったりすることはありませんか。もしかすると、腰部脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)かもしれません。

 脊柱管とは脊椎(せきつい)の中の脊髄(せきずい=神経)が通る管です。脊柱管が何らかの原因で狭窄する(狭くなる)と、神経は圧迫されます。同時に神経の中にある血管も圧迫されます。血管が圧迫されると神経が阻血状態(血が流れない)や、うっ血状態(血の流れが滞る)になり障害を起こします。

 腰部脊柱管の狭窄は、腰を伸ばすと強くなり、腰を曲げると弱くなる特徴があります。狭窄する原因は先天性、後天性のものがありますが、ほとんどは後天性によるものです。

 後天性の原因としては▽脊椎の変形▽脊髄周囲組織の肥厚▽変性すべり症▽分離すべり症▽椎間板(ついかんばん)ヘルニア▽外傷性−などがあります。これらの中でも加齢からくる脊椎の変形・脊髄周囲組織の肥厚が大半を占めます。このため腰部脊柱管狭窄症の罹患(りかん)率は50代から増え始め、高齢になるほど高くなります。

 腰部脊柱管狭窄症の代表的な症状は間欠性跛行(はこう)です。背中を伸ばして歩いたり、立ったりしていると、下肢や会陰部(えいんぶ)のしびれや冷感、灼熱(しゃくねつ)間など異常知覚が徐々に増したり、下肢にだるさや痛みが出て歩くことが困難になったりする症状をいいます。

 ただ、腰を曲げて休むとまた歩けるようになったり、立っていられるようになります。腰を曲げて歩くことができる手押し車や乳母車、カートを使うと、長い距離を歩くことができます。自転車でも症状が出にくいとの特徴もあります。

 その他の症状としては排便排尿の障害がありますが、発現頻度は低いようです。腰痛を強く訴える人も少ないようです。

 診断方法としては一般的な診察や画像診断があります。一般的な診察では問診、視診、触診、神経学的診察で症状の程度、他の疾患との鑑別を行います。

 画像診断にはエックス線の一般撮影、CT(コンピューター断層撮影)、脊髄腔(くう)造影、MRI(磁気共鳴画像装置)などがあります。エックス線やCTでは主に骨の変形が分かります。脊髄腔造影やMRIは骨の変形だけでなく、脊髄の圧迫の様子も確認できます。

 鑑別を要する代表的な疾患としては、間欠性跛行を生じる閉塞(へいそく)性動脈硬化症があります。下肢の血流障害により足の色が悪かったり、足が冷たかったりします。このような血流障害による症状は腰部脊柱管狭窄症単独ではあまり出現しません。

 間欠性跛行の症状にも違いがあり、閉塞性動脈硬化症では腰を曲げても痛みが消失しないことが特徴的です。腰部脊柱管狭窄症の中には閉塞性動脈硬化症との合併例が数パーセントと言われており、この場合は専門医の診察を必要とします。

 ほかにも歩行時に下肢の痛みが出る疾患はありますので、専門医での診察をお勧めします。

(長崎市畝刈町、あんず整形外科 院長 木 謙司郎)

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