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2009年9月21日掲載

腰部脊柱管狭窄症

 腰部脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)による腰臀部(でんぶ)痛や下肢の痛み、しびれに対する治療としては、手術的治療と保存的治療があります。

 まず、保存的治療には薬物療法があり、主に痛みに対して消炎鎮痛剤などを使用する場合と、しびれに対してプロスタグランディン製剤などを使用する場合があります。痛みは内服薬で改善することも多いのですが、しびれは改善が難しいこともあります。

 内服薬での症状の改善が不良の場合には、次のステップとして神経根ブロックがあります。これは腰の神経に痛みを和らげる薬を注入する治療で、人によってはかなりの効果が得られます。しびれなども、脊椎の中にある硬膜外腔(がいくう)という部分に局所麻酔剤などを注入する「硬膜外ブロック」で改善を得ることができますが、数週間すると再び元に戻ることが多いようです。

 保存的治療としてはコルセットなどの装具療法がありますが、症状が緩和されてもそれが持続することは少ないようです。これらの保存的治療をしても痛みやしびれが持続し、歩行や日常生活に支障がある場合には手術が適用されます。

 ここで手術によって改善される症状と、改善されにくい症状があることを理解する必要があります。まず、しびれは改善されますが、約半数の人がいくらかのしびれが残ります。特に安静時にもしびれを感じていた場合には残りやすいようです。これは手術に至るまでの長期間の圧迫により、神経組織に不可逆的な変化が生じていることが原因です。しかし、歩行に伴い増強するしびれは改善されます。

 腰痛はそれを起こす原因がさまざまであり、神経の圧迫によるものは手術で改善します。しかし、脊柱全体の加齢的変化や変形などに由来する場合は手術を行っても原因が異なるため痛みは残ります。

 一方、歩行や動作に伴って生じたり、増強する臀部痛や下肢痛はほとんどの場合が改善されます。歩行できる距離も明らかに伸びて歩くのが楽になります。神経のまひ症状も重症でなければ改善します。ただ、手術までの期間が長いと改善が不良の場合があり、手術を受けるタイミングが重要です。

 いずれにしろ臀部や下肢の痛み、しびれで歩行や日常生活に支障があり、保存的治療で改善しなければ手術を受けた方が良いと思われます。

 手術は、基本的には神経組織の圧迫を取り除くことになります。アプローチの方法は幾つかありますが、神経組織そのものには同じことをするわけで、その後の社会復帰や入院期間などに変わりはありません。大事なのはいかに安全、確実に、かつ長期にわたり安定した成績を維持できる方法であるかです。

 腰部脊柱管狭窄症は手術によってかなりの改善が得られますが、患者さん一人一人で病態は異なっています。主治医としっかり話をして、最適な治療を選択されるのが良いかと思います。


 (島原市下川尻町、島原整形外科西村クリニック 院長  西村 行政)

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