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2009年10月5日掲載

中高年のマイボーム腺機能不全

 マイボーム腺機能不全と言われても、ほとんどの人には耳慣れない病名と思います。

 マイボーム腺は上下のまぶたの縁にある数十個の分泌腺で、涙の表面を覆う油脂成分を出す役割を果たしています。マイボーム腺の油の出口を含めて異常が生じる状態をマイボーム腺機能不全と呼んでいます。

 大きく分けると、油の分泌量が減少する閉塞(へいそく)性と、油の分泌が過剰になる脂漏性の二つのタイプがあります。60〜70代の3割くらいにマイボーム腺機能不全の症状が見られるとの報告もあります。

 症状は目の充血、異物感、乾燥感、灼熱(しゃくねつ)感、かゆみ、一時的なかすみなど多様で、「ショボショボ」「まぶたが重い」といった訴えもあります。

 閉塞性では涙の最表層の油分が不足するため、目の表面が乾燥しやすく、ドライアイになることがあります。従ってコンタクトレンズを装用している人は、トラブルが生じやすくなります。さらに細菌感染が起きるとマイボーム腺炎となり、まぶたがただれることもあります。

 マイボーム腺腔(くう)内に油分が固まって詰まるとマイボーム腺梗塞(こうそく)となります。まぶたを反転すると、白色や灰色の濁りが認められます。

 根本的な治療のためにはマイボーム腺の中の油分や雑菌を十分に除去する必要があります。まぶたを熱いタオルなどで温めたり、まぶたの縁を洗浄したりということを繰り返すことが効果的です。

 まぶたを温めるのはマイボーム腺内の油分を軟らかくし、溶け出しやすくするためです。適度に湿らせたタオルを電子レンジで40秒前後温め、やけどしない温度であることを確認してから、閉じたまぶたの上にのせ、4、5分温めるといったことを毎日1、2回行うよう勧めています。

 下まぶたのできるだけ端の縁を親指と人さし指でつまんで油分を押し出すようにマッサージするのが効果的な人もいますが、高齢の人には難しいようです。

 眼科では点眼治療や赤外線による温罨(おんあん)法、症状の程度の強い人には専用のピンセットでまぶたの縁を圧迫してマイボーム腺内の油脂を押し出す方法も行います。しかし、まぶたの縁を圧迫する方法は、軽い痛みを伴う点や時間がかかる点、治療する医師の首や肩などにも大きな負担がかかるのが欠点です。もう少し簡便で効果的な方法が開発されないかと考えています。

 マイボーム腺機能不全は慢性的、難治性の疾病ではありますが、あまり神経質になる必要はありません。ドライアイで角膜に傷ができ、一時的に目がかすむことはあっても、持続的に視力が低下することはありません。定期的に眼科を受診し、個々に合った適切な治療を継続することが大事です。

 他の眼科疾患でもマイボーム腺機能不全と似た症状を生じることがあります。不明な点があれば、眼科の主治医に相談をしてください。


(南島原市口之津町、渡部眼科医院 院長  渡部 富美雄)

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