2009年11月16日掲載
甲状腺疾患
次のような症状に悩んでいる方はいませんか。
(1)40代以上の女性で、便秘、体重増加、むくみ、足に力が入らない、立ちくらみがある。
(2)10代から30代の若い人で、汗っかきで、よく食べるのにやせた、時に動悸(どうき)がする。
(3)高齢の人で、体重減少や食欲不振あるいは不整脈が最近起こるようになった。
このような症状を自覚している人はぜひ一度、甲状腺ホルモンをチェックすることをお勧めします。
ホルモンとは私たちの体の中で作られ、分泌される物質です。適切なときに、適量が分泌されることで体の働きを正常に調節しています。多数あるホルモンの一つである甲状腺ホルモンは、元気の源としての働きをしています。しかし、意外と頻度が高いのに見逃されていることが多いのが甲状腺疾患です。
甲状腺は、のど仏の下にあり、チョウの羽のように左右に広がった形をしています。鏡でじっくりと頸部(けいぶ)を見てください。もし腫れているかもしれないと思った人は、すぐに近くの内科医を受診する必要があります。甲状腺が腫れていなくても甲状腺ホルモンの分泌が多すぎたり、不足したりすると病気になります。
甲状腺の病気は10人に1人と高頻度で見つかります。ホルモンが過剰になるのは150人に1人、不足するのは30〜40人に1人、腫瘍(しゅよう)ができるのは同じく30〜40人に1人という割合です。
冒頭に挙げた症状のうち(1)は甲状腺ホルモンが不足の症状です。ほかに関節痛、認知症の進行など、甲状腺疾患とは思えない症状が見られることがあります。検査値でコレステロールが高い場合も注意が必要です。(2)、(3)はホルモン過剰な場合の症状であり、ほかに手が震える、目が突出するなどの症状が見られることもあります。
しかし、高齢者でははっきりした症状がなく、原因不明の倦怠(けんたい)感として他の疾患と間違われることがあります。甲状腺の病気が疑われたときは、近くの病院で頸部の触診と血液検査を受ければ診断がつきます。腫れが気になる場合には、専門医を受診し、超音波検査を行うことにより確実な診断を得ることができます。
治療に関しては、ホルモン不足の場合は、甲状腺ホルモン剤を服用してホルモンを補います。自覚症状のない甲状腺ホルモン軽度低下状態であっても、動脈硬化を促進し、心疾患の発症率を増加させることが分かっていますので、早期に治療した方がよいでしょう。
ホルモン過剰な場合は、原因疾患により治療が異なります。最も頻度が高いバセドー病では、薬剤療法、放射線療法、手術などの選択肢があります。腫瘍の場合はまず細胞の一部を取って良性か悪性かを調べ、悪性の場合は手術、良性の場合は経過観察となります。
どの病態にしても長期にわたり定期的に受診する必要があります。もし原因不明の症状が続いて、気になる場合、考慮すべき疾患です。
(長崎市松が枝町、南長崎クリニック 医師 難波 裕幸)
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