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2010年1月18日掲載

導入進む『あじさいネット』

 ある日突然、おなかが痛くなって、近くの診療所を受診したとしましょう。その患者にとって診療所は初診でも、大きな病院で検査を受けたことがあって、その時の診療情報がすぐに分かったとしたら、どんなに便利でしょうか。

 つまり、その病院での胃内視鏡検査、コンピューター断層撮影(CT)検査、血液検査や処方内容などを、診療所のパソコン画面で詳細に確認できるならば、それは治療方針の決定、重複検査と重複処方の防止、併用禁忌薬剤の確認などに有効に利用されるはずです。

 また、ある病気でかかりつけ医に通院している患者が、病院で手術することになったとしましょう。かかりつけ医が入院後の診療内容を診療所のパソコン画面で日々閲覧することができれば、家族への退院前の説明や退院後の継続診療に有効に利用することができるでしょう。

 かかりつけ医と病院で診療情報を共有することは、かかりつけ医、患者、病院医師との間に良好な関係を築き、患者に一層の安心感を与えることになるのです。

 このようなことを具現化した取り組みを「地域医療IT連携」といいます。本県では2004年から大村市を中心に、診療所から国立病院機構長崎医療センターの電子カルテを閲覧できる「あじさいネット」が始まりました。患者の同意の下、セキュリティーを強化したインターネットを使って診療所から中核病院の診療情報を閲覧できるサービスです。

 地域医療へのIT導入が容易でないとされる中、利用診療所と登録患者数を順調に伸ばし続けており、診療所から病院の診療情報を閲覧利用するというあじさいネットスタイルは「低コストで、実用的」と全国から注目を浴びています。

 さて、05年当時、長崎市内ではこのような地域医療IT連携を行っている病院はありませんでした。長崎市医師会は統一規格の医療連携ネットワークの構築が必要であると考え、このあじさいネットに参入することを決めました。

 構想から4年の歳月を経て、09年4月に第1期として長崎大学病院、光晴会病院と十善会病院が参入し、長崎市内でもあじさいネットが運用開始されました。同11月には第2期として日赤長崎原爆病院と市立市民病院でも稼働し、さらに今春には済生会長崎病院、井上病院、聖フランシスコ病院と長崎記念病院での運用も始まる予定です。その時点では長崎医療センター、大村市民病院も含めて情報提供病院は11病院、「バーチャルホスピタル」としての病床数は計約3600に増え、全国一のネットワークに成長することは間違いありません。現在、登録診療所は100を超え、連携事例は約9千件となっています。
 長崎市医師会は「長崎医療情報維新」と称し、あじさいネット推進事業を展開してきました。今後も患者が多くの恩恵を受けられるようにまい進しますので、あじさいネットへのご理解、ご支援のほどよろしくお願いします。


(長崎市医師会 情報処理担当理事  平田 恵三)

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