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2010年4月5日掲載

子宮頸がん

 子宮頸(けい)部と呼ばれる子宮の入り口にできるがんが「子宮頸がん」です。日本では毎年1万人以上が子宮頸がんを発症し、約3500人が亡くなっています。女性のがんのうち、全世代では乳がんに次ぎ発症率の高いがんです。特に結婚や出産といった機会の多い20代から30代の若い女性に発症率が高く、近年急増しています。

 子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因ということが近年の研究で分かってきました。HPVの型は100種類以上あり、子宮頸がんの原因となるのはそのうち15種類ほどです。特にHPV16型、18型が日本では約60〜70%を占めています。

 このウイルスは性交渉で感染するため、ほとんどの女性が一生のうちに一度は感染するとされています。健康な女性であればウイルスは自然に排除されてしまいますが、排除されず感染が長期間続くと子宮頸がんになることがあります。

 厚生労働省は20歳以上の女性に対し、2年に1回の子宮がん検診を推奨しています。地方自治体によって異なりますが、無料、もしくは一部負担で子宮がん検診を受診できます。

 しかし、欧米では約8割の女性が子宮頸がん検診を受けているのに対し、日本では約2割にとどまっています。子宮頸がんは自覚症状のないまま検診で見つかることも少なくありません。病気が進行するにつれ帯下(おりもの)の異常、不正性器出血(性交時の出血など)が見られるようになり、自覚症状に気付いたときにはかなり進行していることもあります。

 そうした中、昨年から、子宮頸がんの原因であるHPV感染を予防できるワクチンが日本でも発売され、接種が始まっています。すべてのHPVの感染を防御できるわけではありませんが、HPV16型、18型といった特に発がん性が高いHPVの感染を予防することができます。

 前述したようにHPVは主に性交渉によって感染します。そのため、ワクチン接種はHPVに未感染と思われる初回性交前に行われることが望ましく、接種対象は10歳以上の女性となっています。

 既に感染している場合、このワクチンで感染したウイルスを排除したり、発症している子宮頸がんの進行を遅らせたり、治療したりすることはできません。しかし、現在感染しているHPVが排除された後の再感染を防ぐという意味では十分効果が期待できると考えられています。

 HPVワクチンは産婦人科や小児科、内科などで接種することができます。接種方法は初回から1カ月後、6カ月後の3回接種することが必要です。費用は3回の合計で約5万円と高額ではありますが、予防効果は20年以上続くと考えられています。注射した部位の痛みや腫れなどの副作用はありますが、それも通常は数日程度で治まります。

 最後に、ワクチンで予防できない子宮頸がんも存在するため、定期的な子宮がん検診を受けていただくことも引き続き重要です。そうすることで、子宮頸がんはほぼ100%予防、もしくは早期発見により治療可能な病気になると考えられています。

 詳しいことは、近くの産婦人科に問い合わせてください。


(長崎市石神町、まつお産科・婦人科クリニック院長)

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