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2010年5月3日掲載

拡大する新型タムシ

 新型タムシの感染が広がっています。原因はトリコフィトン・トンズランスという皮膚糸状菌の一種で、以前は日本ではほとんど見られなかった菌です。菌の名前から「トンズランス感染症」とも呼ばれます。

 恐らく2000年ごろに海外より持ち込まれ、一部の県で主にレスリング、柔道などの格闘技を行う高校生の間で感染者が出るようになりました。その後、試合や合宿、練習などの交流の中で瞬く間に全国に感染拡大していきました。

 本県においても03年、第1例目が長崎市内の高校の柔道部員から確認されました。その後、数年のうちに感染者は県内全域で確認されるようになり、現在まで増加傾向を示しています。

 最初はほとんどの症例が格闘技(柔道、相撲、レスリング)を行う高校生を中心に感染が拡大していましたが、その後、中学生、最近では小学生の症例も出てきています。格闘技を行わない幼児や家族内への感染例も少数ながら認められるようになっています。

 この菌の特徴は第一に、感染力が強いことです。保菌者との試合、練習などの短時間の接触で感染した例もあります。

 第二に、感染しても皮膚症状が軽い場合があることです。今までのタムシは赤い発疹(ほっしん)や、かゆみが出るのが普通でした。新型の場合、発疹はあってもかゆみをほとんど感じない場合もあり、そのために見逃されることがあります。

 第三の特徴としては、毛に感染しやすい点が挙げられます。毛髪はもちろん、まれに体表面のいわゆるうぶ毛にも侵入することがあります。毛髪に感染した場合もなかなか気付きにくく、脱毛を生じるようになって初めて気付く場合もあります。

 臨床的には、直接の接触によって感染します。感染部位は顔、首、上肢(特に前腕)などの露出部や胸、背中などに体部白癬(たいぶはくせん、タムシ)として発症する場合と、毛髪、頭皮に感染し頭部白癬(シラクモ)として発症する場合があります。
 診断確定にはいずれも原因菌の検出のために培養検査が必要です。頭部の場合は、ヘアブラシ法という方法が有効です。市販のプラスチック製のヘアブラシで頭部全体をこすり、菌をつり上げ寒天培地で培養する方法です。この方法は症状はなくても、毛髪に菌の感染がある保菌者の発見に特に有効です。集団感染の検診にも用いられます。

 治療は、体部白癬だけで、頭部から菌の検出が認められない場合、基本的には抗真菌剤の外用で十分です。ただし、外用1カ月で軽快しない場合は内服薬の追加が必要になる場合もあります。

 頭部白癬の場合は原則、内服薬による治療となります。2〜3カ月の内服が必要になります。注意することは、たとえ抗真菌剤であっても頭部に塗ってはいけないということです。そうすることで重症型の頭部白癬を発症させる危険性があるからです。

 心配な症状がありましたら、近くの皮膚科専門医を受診してください。


(長崎市岩見町、本間皮ふ科医院 院長  本間 喜蔵)

 

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