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2010年6月21日掲載

中学校の運動会を見て

 去る5月の日曜日。校医をしている長崎市の中学校の運動会に行ってきました。広い敷地に立派な校舎が並んでいます。生徒数が100人に足りないことは承知していましたが、広い運動場にいざ集合しますと、その少なさに驚き、端的に少子化を実感させられました。

 生徒は常に競技に出場しているか、係りの仕事をしているかで、座る時間もありません。強い日差しの下でも一日中動ける生徒たちですが、保護者席に目を向けると当然、年齢は高く、健康問題も気になってくるところです。

 病気は早期発見・早期治療とよくいわれます。実際には早期に発見できたとしても治療が困難なものがあったり、逆に発病後時間がたっても治療が遅きに失しないものもあります。しかし、早期に発見できた方が、その後の治療の選択肢は広がります。そして早期発見の方法として、健診があるわけです。

 2008年4月から始まった「特定健診」という制度があります。メタボリック・シンドローム(内臓脂肪症候群)に着目し、糖尿病など生活習慣病の予防・改善を重視した健康診査のことです。職場に勤めている人はそこで毎年、この健診が行われると思います。社会保険の扶養家族、または国民健康保険に加入している人が40歳以上の場合は、特定健診の受診券が送られてくると思います。

 この特定健診を利用されたことのない人には、健診内容について次のことを知っていただきたいと思います。

 (1) 血液と尿を少し採るだけで体への負担はありません。

 (2) 多くの医療機関で受診可能です。近くの医療機関で自分の都合に合わせて受診できます。

 (3) 検査項目は決して多くありませんが、よく絞り込まれていて有意義です。

 (4) 原則無料です。
          
 特定健診は「メタボ健診」ともいわれますので、太った人が対象と思われるかもしれませんが、40歳以上の人ならばどんな人にも合理的な内容です。

 ただ、すべての健診について言えることですが、異常を指摘されなかったからといって、すべての病気が否定されたことにはなりません。逆に異常が見つかったとしても、焦らず、ゆっくり付き合っていけば“一病息災”ということもあります。いずれにしても健診を受けたことが、明るく元気に生活する基盤になり、病気を防ぐエネルギーを生んでくれるかもしれません。

 ちなみにテレビなどで、よく「専門医」と「かかりつけ医」が比べられています。木を見て森を見ないのか、森を見て木を見ないのかという問題が論じられているようにも思います。しかし、そこに患者さんがいる以上、その人にとって最善のことなされるべきです。患者さん本人と医療機関の双方が努力していけばよいと思います。あえて対比しなくても最善の結果に近づけると思います。

 さて、運動会の日、元気に運動場を駆けた生徒たちですが、一方、世の中には小さいときから病気と向き合う子どもたちもいます。今はお互いを知らなくても、将来助け合って社会を築いていってほしいと思います。そして、医療がその支えになっていければと思います。

(長崎市扇町、はらかわ内科クリニック 院長  原川 誠二郎)

 

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