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2010年8月2日掲載

女性の大腸がん

 本県のがん死亡率は2008年に全国ワースト5に入りました。大腸がんは全国的にみても増加傾向にあり、死亡原因の順位でも男性3位、女性1位になりました。今、女性の大腸がんが増えているのです。

 大腸は肛門に近い直腸と、それより上の結腸(口に近い部分より盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸)からなります。「大腸がん」というときは「結腸がん」と「直腸がん」を合わせたものを指します。

 以前は、日本の女性は結腸がんになる頻度が低かったのですが、近年、結腸がんが増加しています。ハワイの日系移民に日本人よりも結腸がん患者が多く、欧米の白人とほぼ同じという研究データが報告されており、これらのことから食事の欧米化(脂肪の多い肉食が増えたこと)の影響が大きいと考えられます。

 さらに、女性は更年期に入る40代後半から、大腸がんの罹患(りかん)率が上昇し、50代からは死亡率も増加します。同年代の男性患者より予後が悪いという統計もあり、女性ホルモンが大腸がんの防御因子となっていることを示唆する報告もあります。更年期以降の女性は大腸がんに、より注意を払う必要があります。

 大腸がんは早期では、ほとんど自覚症状が見られません。直腸がんの症状としては、血便が出る、便が細くなる、残便感、便秘と下痢を繰り返す−などがあります。しかし、結腸がんは症状が出にくく、あっても慢性的な出血に伴う貧血や腹部膨満感、腹痛などで、症状が出たときには進行がんになっていることも多いのです。これが大腸がん死亡増加の原因になっています。

 大腸がんは早期に発見できれば、内視鏡や手術で完全に治すことができる病気です。早期の大腸がんは検診などで発見されることが少なくありません。症状がないうちから、大腸がん検診(便潜血検査)を受けてください。1回でも便潜血反応が陽性に出たら、必ず大腸の精密検査(大腸内視鏡検査や注腸検査)を受けましょう。

 女性は男性と比較して検診を受けるチャンスが少ないことが多く、女性の大腸がん増加の原因の一つになっています。女性も40歳を過ぎたら、毎年必ず大腸がん検診を受けましょう。以前に比べると、大腸内視鏡検査もずいぶん楽になっています。恥ずかしがらず、怖がらず、精密検査も受けてください。

 特に症状がある人や、血縁者に大腸がんの経験者がいる人は早めに大腸の精密検査を受けられることをお勧めします。

 ほかの病と同じく早期発見、早期治療が一番の予防ですが、肥満や高脂肪の肉食、喫煙、飲酒は大腸がん発生のリスクを高め、適度な運動(1日合計60分程度のウオーキングを週に3、4日など)はがん発生のリスクを下げるとの研究報告があります。

 適度な運動とバランスのよい食事などで太り過ぎに注意し、がん予防の生活習慣を心がけましょう。そして、検診で早期発見に努め、健康な毎日を送りましょう。

(長崎市馬町、ちひろ内科クリニック 院長  土屋 知洋)

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