>>健康コラムに戻る

2010年9月6日掲載

ロコモと変形性膝関節症

 皆さん、「骨と関節の日」をご存じですか。

 日本整形外科学会が、毎年10月8日を「骨と関節の日」と定めています。「ホネ」のホは、漢字に見立てると「十」と「八」に分解できることから啓発の記念日としたのです。学会ではこの日を中心に、皆さんの快適な暮らしに役に立つ行事を行っています。

 先日、日本人の平均寿命がさらに延びて、女性は世界第1位の86・44歳、男性は第5位の79・59歳と発表されました。しかし、人が他人の手を借りずに自立して生活できる期間はそれよりも6〜8年短く、その「健康寿命」を延ばすことが求められています。

 生活習慣病の予備軍はメタボリックシンドローム(通称メタボ)と呼ばれるのはご存じでしょうが、ひざや腰など運動器の障害で介護が必要になる危険性が高い状態を「ロコモティブシンドローム」(以下ロコモ)と呼びます。

 次の7項目で思いあたることはありますか。

 (1)2キロ程度の買い物をして持ち帰れない。
 (2)家で掃除機を使ったり、布団の上げ下ろしができない。
 (3)家の中でつまずいたり滑ったりする。
 (4)15分続けて歩けない。
 (5)横断歩道を青信号で渡りきれない。
 (6)階段を上るのに手すりが必要である。
 (7)片脚立ちで靴下がはけない。

 いかがですか。一つでも当てはまれば、ロコモの可能性があります。

 そのロコモの原因の一つに変形性膝(ひざ)関節症があります。ひざ関節内でクッションの役割をする軟骨が徐々にすり減って痛みが起こるものです。一応病気なのですが、私は病気ではなく顔のしわと一緒で誰にでも起こる年齢的なものと説明しています。残念ながら顔のしわと違って痛みがあるので、治療が必要となってきますが。

 治療方法は初期であれば、消炎剤の内服薬や張り薬、電気治療などがあります。中期になると、それでは改善せずヒアルロン酸の注射が必要になってきます。ヒアルロン酸は関節で潤滑油やクッションの役目を果たしますが、炎症や痛みを抑える効果もあります。立つこともできないくらい病状が進行していなければ、効果のある患者はかなりいらっしゃいます。

 それ以上進んだ末期は主に人工関節を使った手術となります。一定のリスクはあるものの痛みはほぼ軽快します。

 ちなみに、ヒアルロン酸を飲んでも効くかどうかはいまだに結論は出ていません。今の段階では飲むヒアルロン酸は健康食品の一つと考えた方がいいでしょう。

 自己判断で健康食品に頼りすぎ、適切な診断や治療が遅れることがないように、ひざの痛みが長引いたら医療機関を受診した方がいいでしょう。

 予防は運動療法が効果的です。特に歩行浴、水中歩行はお勧めです。肥満気味の人はダイエットもがんばりましょう。

 「健康寿命」を延ばして、いつまでも自立したシニアライフを元気で楽しく送っていただきたいと思います。

(東彼川棚町、山本整形外科 院長  山本 尚幸)

>>健康コラムに戻る