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2010年9月20日掲載

ロコモと腰痛

 日本は高齢社会になり、元気なシニア世代のスポーツ参加によるけがや、加齢による骨の変形に悩む人が増加しています。10月8日は「骨と関節の日」です。身近な問題だけに、関心を持ってほしいと思います。

 骨と関節に関し各年齢層に幅広くみられる疾患が、腰痛症です。病気やけがで通院をしている通院者率は、高血圧症に次ぐ第2位です。

 腰痛は、ヒトが2本の足で直立歩行するように進化したために起こった「宿命的な症状」といわれています。上半身の重みを腰で支え、立った姿勢を維持するために、脊柱(せきちゅう)やそれを支える筋肉に大きな負担がかかっています。

 原因を見ると、腰に負担がかかるスポーツや重いものを持つ重労働のほか、デスクワークや長時間の立ち仕事でも姿勢が悪いと痛みが生じます。車などの乗り物利用に伴う運動量の減少が、脊柱を支える筋力の低下を引き起こしています。

 高齢者の腰痛の多くは背柱の椎間板(ついかんばん)の傷みや、骨粗しょう症による骨の変形などで発生します。内科的な病気のために運動量が低下したり、心理・社会的因子があったりすると、症状が悪化、長引く要因となります。

 さらに痛みによる活動性の低下は、他関節の変形などの運動器疾患を引き起こします。高齢者では日常生活が制限され、生活の質が著しく低下することになりかねません。

 ロコモティブシンドローム(ロコモ)とは、骨・関節・筋肉など運動器の機能が衰えることにより日常生活での自立度が低下し、介護が必要となったり、寝たきりになったりする可能性の高い状態です。次に挙げる七つのチェック項目のうち、一つでも当てはまるとロコモの心配があります。

 (1)片脚立ちで靴下がはけない
 (2)家の中でつまずいたり滑ったりする
 (3)横断歩道を青信号で渡りきれない
 (4)階段を上がるのに手すりが必要である
 (5)15分くらい続けて歩けない
 (6)2キロ程度の買い物をして持ち帰るのが困難
 (7)家のやや重い仕事(掃除機や布団の上げ下ろし)が困難

 ロコモの原因としては、バランス能力の低下、筋力の低下、骨粗しょう症、変形性関節症、脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)があります。要介護や寝たきりになる原因には脳卒中や認知症がありますが、約4人に1人は関節の痛みや転倒による骨折など運動器の障害が起因しています。

 予防や進行防止には、全身の状態に合わせた適度な運動「ロコトレ」(運動器トレーニング)が重要です。腰痛やひざの痛みを個別に治療するだけではなく、バランス感覚や筋力など全身を総合的にとらえた対処が必要になります。

 急性期に運動すると悪化したり、安静にしすぎると筋力が落ちるので、安静と運動は適切に行わなければいけません。腰痛がある人は一度、整形外科での専門的な診察、運動器リハビリテーションをお勧めします。

 

 (長崎市横尾2丁目、麻生整形外科 院長  麻生 英一郎)


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