2010年10月4日掲載
コンタクトレンズによる眼障害
わが国では現在、1700万人を超えるコンタクトレンズ(CL)ユーザーが存在します。これは実に国民の約13%に当たります。CLの材質は年々進歩していますが、CLによる眼障害の発生はかえって増加の傾向にあります。その原因の一つに頻回交換ソフトCLの普及と、CLのケアの問題があります。
CLユーザーの大半はソフトCLを使用しており、中でも2週間で交換するタイプが主流になっています。CLを2週間使用するためには、きちんとしたケアが必要になります。しかし、以前の煮沸消毒は加熱器が必要で、過酸化水素消毒では中和作業が面倒でした。
現在主流のケア用の液剤マルチパーパスソリューション(MPS)は一つで洗浄、すすぎ、消毒、保存ができて簡便なため、CLユーザーの4分の3が使用しています。MPSはCLとともに目に直接入るため、刺激が少なく眼障害やアレルギーを起こさないよう調整されています。
ただし消毒剤としては低濃度で、効果に限界があるのが欠点です。そのため、こすり洗いとすすぎ洗いをしっかり行い、消毒前に微生物による汚染レベルを下げることが大切です。装用後のCLにはタンパク質や脂質の汚れも付着しており、こうした汚れが消毒剤の効果を妨げる可能性もあります。
装用後のCLに約100万個の菌が付着していても、MPSはこすり洗いによって1万個から10万個程度に減らし、さらにすすぎ洗いで100個から千個程度に減少させることができます。
洗浄が不十分だと、CLケース内で微生物が繁殖し、バイオフィルムができることもあります。細菌で作られた糖タンパクの膜のことで、消毒剤を効きにくくする働きがあります。CLケースは毎日清潔にして乾燥させ、定期的に交換することが大切です。
日本コンタクトレンズ学会と日本眼感染症学会の「CL関連角膜感染症に関する全国調査」によって、CL装用が原因と考えられる角膜感染症で入院治療が必要になった患者の使用実態が明らかになってきました。
2週間頻回交換レンズを使用している人が多く、細菌検査では緑膿菌(りょくのうきん)とアカントアメーバ(アメーバの一種)が多く検出されました。
ケアの面では▽CLの洗浄を毎日しない人は約半数▽CLの消毒を毎日しない人は約4割▽こすり洗いを毎日しない人は約7割▽レンズケース交換をほとんどしない、あるいは全くしない人は約3割▽定期検査をほとんど、あるいは全く受けない人は約3割−という驚きの結果でした。CLの装用期間については約半数が決められた期間より長く使っていました。
CLに関連した角膜感染症の多くは若い人に突然発症し、その人の日常生活に多大な影響を及ぼします。重篤な視機能障害を残すことがある角膜感染症の発症は、CLユーザーにとって常に注意しておかねばならない問題です。CLの装用期間、消毒、保管方法をきちんと守り、定期検査を受けることが大切です。
(諫早市永昌町、まつなが眼科 院長 松永 伸彦)
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