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2010年11月18日掲載

関節リウマチ

 関節リウマチは、関節・滑膜に炎症が起こり、痛みや腫れ、変形を特徴とする代表的な自己免疫疾患の一つです。日本での患者数は70万〜100万人で、30歳以上の人口の1%がこの病気にかかるといわれています。どの年齢の人にも起こりますが、30代から50代で発病する人が多く認められます。男性より女性に多く、その割合は約3〜4倍とされます。

 関節リウマチの関節破壊はこれまで数年間かけて緩やかに進行するものと考えられてきました。しかし、最近の研究によりますと、発症から2年以内に関節が破壊されることが証明されています。

 治療を早期に開始するためには発症後、早い段階で診断することが必要となります。しかしながら、関節リウマチの診断に用いられている診断基準(1987年作成)は発症早期の関節リウマチの診断には適していません。このため、現在では新たな関節リウマチの診断基準が提案され、詳細な部分を調整中です。

 関節リウマチは最近まで有効な薬が少なく、治らない病気と考えられてきました。その治療は基本的には、非ステロイド系抗炎症薬、抗リウマチ薬、免疫抑制薬の3段構えで行われ、ステロイド薬が必要に応じ追加されていました。しかも、それは痛みや腫れなどの臨床症状を短期間に改善するのが目標でした。

 関節リウマチの新しい治療薬として近年、最新のバイオテクノロジー技術を駆使し、生物が産生したタンパク質を利用した薬が作られるようになりました。これが生物学的製剤と呼ばれるものです。

 わが国では腫瘍壊死(しゅようえし)因子α(TNF−α)の働きを阻止する生物学的製剤は、2003年からインフリキシマブ(商品名レミケード)、05年からエタネルセプト(同エンブレル)、08年にはアダリムマブ(同ヒュミラ)が承認され販売されています。さらに08年からは、抗インターロイキン−6(IL−6)レセプター抗体のトシリズマブ(同アクテムラ)が関節リウマチの治療にも使えるようになりました。

 これらの生物学的製剤を用いた治療の研究で、関節リウマチの関節破壊の進行を抑制したり、破壊された関節を一部修復したりすることが示されました。このような効果は従来の薬剤では認められませんでした。

 その結果、今日では三つの寛解、つまり炎症と自他覚症状の消失を意味する「臨床的寛解」、関節破壊の進行がほとんど止まることを意味する「構造的寛解」、身体機能の維持を意味する「機能的寛解」の導入を治療目標とするようになりました。

 関節リウマチの治療は、この10年くらいの間に劇的と言ってもいいほどの変化を遂げています。現在のところ関節リウマチの原因は不詳です。しかし、いろんな要素が絡み合って発症することが分かってきています。分子や遺伝子のレベルで解明されるようになってきており、それらの働きを直接抑える治療の研究も進んでいます。

 (長崎市伊勢町、浦山クリニック 院長  浦山 哲)

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