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2010年12月6日掲載

細気管支炎

 細気管支炎は、ウイルス感染による細気管支を中心とした下気道の炎症性疾患です。ゼーゼー、ヒューヒューという喘鳴(ぜいめい)、呼吸困難を伴うのが特徴です。冬から早春にかけての寒い季節に、2歳以下、特に6カ月未満の乳児に多く見られます。

 細気管支は、気管支の先が枝分かれして細くなった場所です。その先には肺胞と呼ばれる、血液との間で酸素を受け渡しする大切な場所があります。細気管支炎では、その細気管支が炎症を起こして粘膜が腫れ、粘液が多く分泌されることで、空気の通りが悪くなり、呼吸困難を来します。

 主な原因はRSウイルスですが、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、ヒトメタニューモウイルスなども原因となります。

 最初は軽いせき、鼻水、鼻づまりなどの風邪症状から始まりますが、次第に呼吸が浅く速くなり、ひどくなると、鼻の穴が広がり、小鼻をひくひくさせ、胸が呼吸のたびにペコペコとへっこみます。うなりながら息をしたり、ゼーゼー、ヒューヒューなどの音が聞こえたり、唇や手足の先が紫色がかるチアノーゼが出たりします。さらに▽ミルクや母乳を飲まなくなる▽口が渇く▽涙が出ない▽オシッコが少ない−などもよくない症状です。

 呼吸状態や全身状態が悪くなければ、外来での通院治療が可能ですが、症状が重ければ、入院が必要になります。特に6カ月未満の赤ちゃんや未熟児、生まれつき心臓病、肺疾患のある子は重症になる傾向があります。

 まずは家族全員で風邪予防を心がけることが大切です。基本的ですが、▽手洗いをしっかり行う▽赤ちゃんを人混みに連れて行かない▽風邪をひいたら赤ちゃんに近づかない−などに注意を払って予防に努めてください。

 細気管支炎の治療は、喀痰(かくたん)溶解剤、去痰剤、気管支拡張剤などを使用します。細菌感染が疑われるときには、抗菌薬も使います。入院となった場合には点滴や酸素投与が行われ、人工呼吸器が必要になることもあります。

 通院治療の際には、家庭看護で気をつけてほしいことがあります。

 呼吸が苦しそうなときは、背中を優しくトントンとたたいたり(タッピングといいます)、体を起こすようにだっこしてあげたりすると呼吸が楽になります。鼻がつまっているときは綿棒で掃除したり、鼻水を吸い取ったりしてみてください。

 また、部屋が乾燥しすぎないようにし、水分の補給に注意しましょう。ミルクや母乳は1回の量を少なくして、何回にも分けて与えるようにしてください。

 病状の変化を見極めることも非常に大切です。急に症状が悪化し、呼吸不全となり重篤化することもあるからです。例えばゼーゼー、ヒューヒューの音が強くて息苦しそうなとき。顔色が良くないとき。胸やおなかをペコペコさせ息をしているとき。母乳やミルクの飲みが悪いとき。このような症状が出たときには、速やかに、小児科を受診するようにしてください。

 (長崎市上西山町、安井小児科医院 院長  安井 誠)

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