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2011年1月17日掲載

ワクチン接種 国が助成制度


 最近始まった3種類の予防接種について説明します。

 約2年前にインフルエンザ菌b型(Hib=ヒブ)ワクチン、約1年前に小児用肺炎球菌ワクチンと、子宮頸(けい)がん予防ワクチンの接種が日本でもできるようになりました。すべて重要なワクチンですが、任意接種のため自己負担費用が大きく、接種が進みませんでした。一部の市町村では助成がありましたが、新たに国がワクチン接種緊急促進事業として助成制度を設けることになったのです。

 ヒブワクチンと小児用肺炎球菌ワクチンの目的は、細菌性髄膜炎をはじめとする重症細菌感染症の予防です。子宮頸がん予防ワクチンは、がんの原因となるウイルス感染の予防が目的です。

 細菌性髄膜炎は生命を脅かす重大な病気で、脳の表面を覆う髄膜や脳脊髄液に菌が侵入して強い炎症を起こします。脳の周囲にうみがたまることから化膿(かのう)性髄膜炎ともいいます。日本では年間約千人の小児がかかり、約3人に1人が死亡または重度の後遺症が残るとされます。

 発病初期の診断は困難で、急速に悪化し治療も難しいため、ワクチンによる予防が待ち望まれていました。小児の細菌性髄膜炎の主な原因菌はヒブと肺炎球菌です。細菌性髄膜炎にかかる小児の半数以上は乳児ですので、できるだけ早い時期での接種が大切です。

 子宮頸がんは子宮の入り口にできるがんです。日本では年間約1万5千人が発病しており、特に20〜30代で急増しています。

 原因の発がん性ヒトパピローマウイルスは幾つもの型があり、特に多い二つの型がワクチンで予防できます。しかし、二つの型を合わせても全子宮頸がんの約60〜70%。すべてを予防できるわけではありません。定期検診は従来通り大切です。

 国の接種緊急促進事業の対象は、ヒブワクチンと小児用肺炎球菌ワクチンが5歳未満の乳幼児、子宮頸がん予防ワクチンが中学1年生から高校1年生までの女子です。

 接種時期と回数は年齢により異なります。ヒブワクチンの標準的接種は、生後2〜6カ月の間に開始し、2歳になるまでに計4回必要です。生後7カ月〜1歳未満開始の場合は計3回、1〜4歳開始の場合では1回接種になります。

 小児用肺炎球菌ワクチンは標準的には、生後2〜6カ月の間に開始し、生後15カ月までに計4回接種します。生後7カ月〜1歳未満の開始では計3回、1歳開始では計2回、2〜4歳開始では1回の接種になります。

 子宮頸がん予防ワクチンは中学1年〜高校1年までの期間に開始し、計3回の接種が必要です。

 日本のワクチン行政は他の先進国に比べると遅れています。ワクチンにより予防できる病気や、他の先進国でほぼ撲滅された病気が日本にはまだ多くあります。大切な子どもたちを守るため、積極的に、早めに予防接種を受けさせましょう。ワクチン接種および助成制度の詳細については、かかりつけ医に問い合わせてください。


 (長崎市滑石6丁目、おおつかこども医院 院長  大塚 祐一)

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