2011年2月7日掲載
高血圧の非薬物療法について
冬の寒さは血圧を上昇させ、心筋梗塞や脳卒中発症にもつながるため、血圧管理は大切です。高血圧の非薬物療法とは防寒を含め、主に生活習慣の修正になります。具体的には減塩、野菜・果物の積極的摂取と低脂肪食、減量、運動、節酒、禁煙が挙げられます。
減塩の降圧効果には個人差がありますが、1日6グラムの食塩摂取量が推奨されています。日本人の1日平均摂取量は12グラム前後で、和食主体の人が最初から半分にするのは無理があります。まずはみそ汁のおかわりをやめたり、麺類の汁を残したり、香辛料やレモン汁、酢などを使ってしょうゆを減らしたりすることをお勧めします。まずは8グラム、可能なら6グラムを目標にしてはいかがでしょうか。
米国では「DASH食」という低脂肪で、カルシウムの多い乳製品とカリウム、マグネシウム、食物繊維の多い野菜、果物中心の食事が検討されました。通常の食事とカロリーや塩分は同じでも、DASH食では収縮期血圧(最高血圧)が11・4、拡張期血圧(最低血圧)が5・5下がり、減塩の併用でさらに数値が下がることが報告されています。
普段の食事では青菜を多めに、果物を1、2品摂取し、主食はご飯をよくかんで食べるようにしましょう。ただし、糖尿病の人は果物の取り過ぎ、腎臓病の人はカリウム摂取に注意が必要です。エイコサペンタエン酸(EPA)など不飽和脂肪酸の多い魚や魚油の摂取も勧められています。
減量は、体重(キロ)を身長(メートル)の2乗で割った体格指数(BMI)25未満が目標になります。肥満の人は1キロの減量で、血圧が約1・7下がるといわれています。2キロ減量できれば血圧は3〜4下がり、脳卒中の危険は3割少なくなる可能性があります。数キロの減量でも大きな意義があります。
運動療法は心血管病がなければ、中等度の強さの有酸素運動を毎日30分以上行うことが勧められます。軽く息切れする程度で、歩行のように大きな筋肉をよく動かす運動が良いそうです。
エネルギー制限のみの減量では、低カロリー食に体が慣れて減量のスピードが鈍くなる時期があり、その時に少し余計に食べるだけで体重が増加します。運動療法の併用はそういう場合に極めて有効ですし、インスリンの効果を高め、善玉コレステロールを増やす作用もあります。
アルコールは血圧を下げ、酔いが覚めた翌日の血圧を上げます。翌日の血圧を上昇させない量はエタノール換算で男性20〜30ミリリットル以下、女性10〜20ミリリットル以下といわれています。例えば、アルコール度数25%の焼酎を100ミリリットル飲めば、25ミリリットルのエタノールになります。
喫煙は一時的に血圧を上げますが、慢性的な上昇は来さないとされており、禁煙による降圧効果は期待できません。しかし、喫煙は心筋梗塞や脳卒中の強力な危険因子のため、禁煙は重要です。
血圧が高めの人は薬物療法開始前に、また、薬物療法中の方もこれらの非薬物療法を試されてはいかがでしょうか。
(長崎市花園町、かわはら内科循環器科 院長 川原 英資)
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