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2011年2月21日掲載

加齢性難聴について

 私たちの体には、年を取るにつれて、そのさまざまな働きが衰えてくる変化、すなわち老化現象が起こります。聴力も例外ではありません。一般に、聴力の低下は30代前半から少しずつ始まります。この段階では聞こえにくいと感じることはありませんが、加齢に伴って徐々に聴力の低下が進み、聞こえにくいと感じるようになってきます。このような加齢に伴う聴力の低下を「加齢性難聴」といいます。

 加齢性難聴では高い音(高音)を聞く聴力から低下し、その後、中音から低音の聴力が低下します。日常会話における人の声の高さは中音から低音ですので、高音の聴力だけが低下している初期の段階では不自由を感じることはありません。個人差はありますが、だいたい60代になると不自由を感じるようになってきます。

 加齢性難聴では聴力の低下だけでなく、言葉を聞き分ける能力も低下していきます。実際には音はしていないのに雑音がしているように感じる耳鳴りという現象も起こってきます。

 耳の構造は体の外側から順に「外耳」「中耳」「内耳」に大別されます。音は耳介(耳たぶ)で集められ、外耳道(耳の穴)を通り、鼓膜を経由して、中耳から内耳へ伝わります。そこから神経を通って脳へ伝えられ、音として認識されます。加齢性難聴の原因としては主に内耳の細胞の老化が考えられています。さらに神経や脳の老化も加わっていると考えられています。

 前述しましたように、加齢性難聴は老化に伴う生理的な現象です。そのため、残念ながら現在の医療では治療することはできません。補聴器を使って、聴力を補うことができる程度です。

 ただ、治療が必要な場合がいくつかあるので、注意が必要です。耳あかが耳の穴をふさぐ耳垢栓塞(じこうそくせん)は、耳あかを取り除くことによって聞こえが良くなることがあります。

 耳だれや耳の痛みを伴う中耳炎は程度や種類にもよりますが、内服薬や点耳薬などによる消炎治療や手術によって聞こえを良くできることがあります。重大な合併症を引き起こす可能性がある真珠腫性中耳炎では手術が必要になります。

 このように治療によりある程度改善できる場合もありますので、難聴がある人や補聴器を検討されている人は一度、耳鼻咽喉科の受診をお勧めします。

 日本耳鼻咽喉科学会長崎地方部会と県耳鼻咽喉科医会は3月6日午後1時から長崎市築町のメルカつきまち5階ホールで、第14回「耳の日」公開講座&相談会を開きます。講演内容は「補聴器の進歩と将来」「ほっておくと怖い耳の病気」「『耳鳴』が気になりませんか?〜特に耳鳴の治療について〜」の3題です。

 補聴器、人工内耳の相談・供覧コーナー、聴導犬の紹介もあります。参加は無料。どなたでも参加でき、質問の時間もあります。興味のある人はぜひ参加してください。問い合わせは長崎大耳鼻咽喉科(電095・819・7349)。

 (長崎市平野町、宗耳鼻咽喉科クリニック 院長  宗 英吾)


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