2011年3月7日掲載
高齢者のオムツ外しについて
高齢社会を迎え、尿もれ(尿失禁)や排せつ障害のため、オムツ使用の高齢者が増加しています。適切なオムツ使用はやむを得ないとしても、安易かつ不必要なオムツ使用は高齢者の尊厳を奪い、医療経済的にもマイナスです。
排尿に関して、オムツ使用となる原因の多くは以下の二つになります。
(1)膀胱(ぼうこう)容量が低下し、頻尿と尿失禁が起こる「過活動膀胱」。
(2)認知症やADL(日常生活動作)の低下で、自力でのトイレ排尿ができなくなる「機能性尿失禁」。
過活動膀胱に対しては薬物療法が有効です。機能性尿失禁にいかに対処するかが問題となります。
機能性尿失禁の特徴は本人だけでなく、介護者にも(1)身体的(2)心理的(3)社会的な影響を及ぼすことが挙げられます。
すなわち、
(1)身体的には本人はオムツかぶれや褥瘡(じょくそう=床ずれ)など。介護者は腰痛など。
(2)心理的には本人は自信喪失、自己否定、うつ状態など。介護者はいら立ち、動揺など。
(3)社会的には本人、介護者ともに行動範囲や社会参加の制限など。
機能性尿失禁に対する治療、すなわち「オムツ外し」を考える場合、以下のことが必要となってきます。
(A)必要条件=(1)誘導(定時・尿意時など)(2)介助
(B)十分条件=(1)人手(2)環境整備(3)関連機器(4)社会的援助(政治・行政)
介護施設では近年、少しずつ「オムツ外し」への取り組みが行われてきていますが、在宅介護でも「オムツ外し」への取り組みが期待されています。
適切な「オムツ外し」を行えば、オムツ使用者の少なくとも30%以上が「オムツ外し」が可能と考えられています。
「オムツ外し」の第一歩は排尿機能の評価です。そのためには1日の排尿状態を、できれば1時間ごとに調べる「排尿日誌」をつけることが必要です。排尿量、時間、尿失禁の有無、飲水量を記録するのです。
「オムツ外し」が成功する要件として、以下の3点が重要であると分かっています。
(1)1回の排尿量が150ミリリットル以上である。
(2)排尿誘導で2回に1回以上排尿がある。
(3)残尿が100ミリリットル以下である。
これら3点を満たす人は認知症があっても排尿機能は正常と考えられます。尿もれや排せつ障害に対して、パッドとホルダー(下着やオムツ)の適切な組み合わせを選べば、尿汚染なく生活することは可能です。
しかし、それでも一度は排尿日誌をつけ、2、3時間ごとに排尿誘導をして、昼間だけでも「オムツ外し」に挑戦してみてはいかがでしょうか。
「オムツ外し」を考えている場合は、残尿の有無など排尿機能のチェックを最寄りの泌尿器科で受けることをお勧めします。
(長崎市松が枝町、南長崎クリニック 副院長 鈴 博司)
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