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2011年5月2日掲載

皮膚科における最近の治療

 皮膚科の分野でここ2、3年、新たに保険適応が認められた薬や治療法を幾つか紹介します。初めの二つは一般の診療所でも処方、治療が可能なものです。

 ▽ニキビの塗り薬「アダパレン」

 ニキビは毛穴に皮膚の脂分が詰まり、そこにニキビ菌が感染し炎症を起こすものです。ニキビ菌に対し抗菌剤の塗り薬や飲み薬が以前から使われてきましたが、毛穴の詰まりを解消する良い方法がありませんでした。

 アダパレンはその毛穴の詰まりを解消する作用のある塗り薬で、2年半前に発売されました。新たにニキビができるのを防ぐ効果もあるといわれています。1日1回顔に塗りますが、欠点として皮膚の乾燥やヒリヒリ感などがあります。気になる場合は保湿剤を一緒に使ったり、塗る量を減らしたりして対応しますが、3〜4週間で軽くなることが多いようです。

 抗菌作用はありませんので、症状によっては抗菌剤の併用が必要です。また、妊娠中の人には使用できません。

 ▽紫外線治療「ナローバンドUVB」

 3年前、アトピー性皮膚炎、乾癬(かんせん)、白斑、掌蹠膿疱(しょうせきのうほう)症などの皮膚疾患に保険適応が認められました。

 紫外線にはアレルギー反応や炎症を抑える作用があり、皮膚病の治療に使用されてきました。しかし、日焼けや発がんなどの有害な作用もあり、これらをできるだけ少なくして、治療効果を上げる照射方法や治療機器が研究されてきました。

 ナローバンドUVBは治療効果が高く、有害な作用が少ない特定の波長を照射するものです。ナローバンドとは狭い波長という意味です。以前は、薬を塗ってから紫外線を照射する治療法が主流でしたが、ナローバンドUVBでは薬を塗る必要はなく患部に数分間照射するだけです。外来では週に1、2回照射することが多いようです。

 実際には各病気に有効な塗り薬も一緒に使用しますが、アトピー性皮膚炎に対するタクロリムスという免疫抑制剤の軟こうは併用できません。

 照射装置は診療所から病院まで徐々に普及してきており、これからの紫外線治療の主流になるものと思われます。

 ▽TNFα阻害薬

 最後に重症の乾癬に対するTNFα阻害薬を紹介します。

 TNFαとは、さまざまな疾患において炎症反応を引き起こす物質の一つで、リンパ球などから産生されます。この作用を抑える薬品は関節リウマチなどに使用されていましたが、乾癬にも効果があることが分かり、保険適応が認められました。乾癬の患者団体からも、国に働きかけがあったそうです。

 点滴薬と皮下注射薬があり、いずれも1週間から数週間の間隔を置いて使用します。この薬による治療は日本皮膚科学会で承認された病院で行うことになっており、県内では長崎大学病院や国立病院機構長崎医療センター、佐世保市立総合病院など6施設で治療できます。詳しくは同学会のホームページに掲載されています。

(長崎市古川町、わたなべ皮ふ科 院長  渡辺 雅久)

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