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2011年6月20日掲載

学校心臓検診の役割

 新年度も2カ月が経過し、児童生徒のみなさんは楽しく、充実した学校生活を過ごされていることと思います。この時期に学校では内科、耳鼻科、眼科、歯科検診などを行いますが、本日はその中の一つ、学校心臓検診についてお話しします。

 学校心臓検診は、小学1年生、中学1年生、高校1年生を対象に毎年行われており、全員に心臓病調査票(アンケート)、心臓の聴診、心電図検査を行うものです。

 まずアンケートで、心臓に異常があると言われたことがないか、両親、兄弟、祖父母らに若くして急死をされた方がいないかなどを確認します。また、内科検診での心臓雑音の有無、心電図での脈の異常の有無などを総合的に判断します。

 異常所見があった場合には、さらに詳しい検査を行い、学校生活に注意が必要な異常かどうかを判定します。

 この検診の目的の一つは心臓病を可能な限り発見し、適切な指導を行うことで、できるだけ健康に学校生活を送れるよう支援することです。

 長崎市を例にしますと、学校心臓検診は1975年から実施されており、約2%程度の方に精密検査が必要とされています。しかし、そのほとんどは正常か、もしくは軽度の異常で、運動や生活の制限が必要となるのはほんの一部の人です。

 さらに学校心臓検診のもう一つの目的は、心臓病が原因で起こると思われる突然死を予防することです。医療レベルの向上や心臓検診の普及に伴い、運動に関連する突然死や高校生での突然死は確実に減少しています。しかし、全国で年間約20〜30人の児童生徒が、心臓に関係していると思われる突然死で亡くなっています。

 心臓の筋肉の病気(心筋症)や脈の異常(不整脈)など突然死の危険性がある疾患は、高い確率で心電図所見に異常を認められます。このため学校での心電図検査は、検査を行わなければ発見できない疾患に対して、極めて有効な手段になると思われます。

 また、心臓手術の進歩により、今後は先天性心臓病術後の児童生徒が増加してくると思われます。このような児童生徒に対して、適切な運動、生活管理を指導していく上でも学校心臓検診の果たす役割は大きいと考えられます。

 最後に、心臓検診は心臓病の早期発見、突然死の予防が目的ですが、同時に検診後の健康管理や指導のあり方も重要です。これまで全く元気にしていた児童生徒に、新たに心臓疾患が見つかることもありますが、適切な治療管理をしておけば普通の生活を送ることは十分可能です。

 さらに、管理指導の対象となっている児童生徒については、家庭、学校、担当医(校医)の間でのよりよいコミュニケーションが重要と思われます。

(長崎市矢上町、みやぞえ小児科医院 院長  宮副 初司 先生)

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