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2011年7月4日掲載

偶然見つかる膵臓の病気

 膵臓(すいぞう)がどこにあるか知っていますか。上腹部の真ん中、胃の裏側辺りなのですが、実はおなかの中ではなく、背中側の後腹膜腔(くう)にあって、腹部大動脈などの大血管に接しています。体の奥深い所にあるため、膵臓の病変を直接見たり、触れたりすることができません。

 膵臓はとてもユニークな臓器です。その役割は大きく二つあります。共に健康にとても重要な機能です。

 一つは内分泌機能で、血糖をコントロールする司令塔としてインスリンを血中に分泌しています。インスリンは血糖を低下させる唯一のホルモンで、膵臓でのみ作られています。

 もう一つは外分泌機能で、強力な消化液である膵液を作り、十二指腸内に排出することで、食べ物の糖質やタンパク質、脂質などを体が吸収できる形に消化しています。

 内分泌機能を担当するランゲルハンス島細胞と外分泌機能を担当する腺上皮細胞はもともと全く異なる由来の細胞ですが、膵臓の中に同居した形をとっているのです。

 膵臓の内分泌機能の中心は血糖のコントロールですから、これが障害されると糖尿病になります。糖尿病は高血糖という病気の状態ですから、原因は一つに限りません。例えば膵がんもその一つです。

 外分泌機能の障害では、膵液が膵臓内で活動して自らを自己消化する急性膵炎と、消化液が産生されず栄養失調となる慢性膵炎が代表的です。

 採血検査からは、これらの機能障害の情報が得られます。一方で、膵がんなどにより血中濃度が上昇する幾つかの腫瘍マーカーの値なども分かります。

 さらに膵臓を探る方法には、体の外からの腹部超音波検査(US)、CT、MRIなどの画像検査、内視鏡を用いた内視鏡下胆道膵管造影(ERCP)、膵管鏡検査、超音波内視鏡検査(EUS)などがあります。US、CT、MRIでは、ほとんど苦痛なく膵臓の形の変化を知ることができます。

 もし変化があれば、専門医療機関では、ERCPの際に膵管上皮細胞を採取したり、EUSの際に直接膵臓に細い針を刺して細胞を採取したりして、検査することが可能です。これらの採血検査、画像検査、内視鏡検査などを総合して、膵臓の診断をしています。

 US、CTなどで膵臓の内部に、液体を含んだ袋状の病変、いわゆる嚢胞(のうほう)病変が偶然発見されることがあります。嚢胞病変は小さいものは診断が難しく、炎症、腫瘍、膵がんに伴う炎症、その他の嚢胞などがあるため、治療方針を間違わないようにしなければなりません。

 これまで述べた検査をしても判断に困ることも少なくありません。その場合は時間を置いて定期的な再検査が必要になります。

 膵がんは治療困難ながんの代表です。嚢胞病変にも良性、悪性があります。これらを見逃さないように、膵臓の病理を十分に考慮しながら日ごろの診療を行っているところです。

(長崎市大浦町、NTT西日本長崎病院 院長  佐々木 誠)

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