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2011年7月18日掲載

慢性腎臓病


 日本人の死因の第1位はがん、2位は心疾患、3位は脳血管疾患(脳卒中)です。この心臓と脳の病気は合わせて「心血管病」といわれており、血管の動脈硬化が原因となるものです。

 では、心血管病になる最大の危険因子は何かご存じでしょうか。糖尿病でも高血圧でもありません。正解は腎臓病なのです。これには世界中が驚き、腎臓病の重大さが再認識されるようになり、「慢性腎臓病」という概念が使われるようになりました。

 慢性腎臓病は、腎障害を示す所見や腎機能低下が慢性的に続く状態で、英語の頭文字を取ってCKDとも呼ばれます。放置すると腎不全となり人工透析が必要になります。最近、慢性腎臓病があるだけで、死亡の危険率が約3倍にもなることも明らかとなりました。

 腎臓は体の老廃物を排せつする唯一の臓器で、大変細い血管によって老廃物をろ過し、排せつしています。この細い血管が障害されるのが腎臓病です。腎臓の血管が障害されていると、心臓や脳の血管も障害され、動脈硬化が進んでいることが分かっています。すなわち、腎臓病は心臓や脳の血管の動脈硬化と密接な関係があるのです。

 慢性腎臓病は検尿と採血で診断します。簡単なので、どこの診療所、病院でもできます。検尿では主にタンパク尿を、採血では老廃物の一種クレアチニンという項目を検査します。健康な人ではタンパク尿は陰性ですから、陽性であれば異常です。クレアチニンは正常値を上回っていれば、腎機能が50%以下に低下していることになります。

 慢性腎臓病の検査という点で見ると、40歳以上を対象に行われる「メタボ健診」では検尿だけ施行されていることになります。ただ、県内では長崎市をはじめとして多くの国保組合が、クレアチニンの検査も無料でできるようにしています。健康保険組合によってはクレアチニンを健診項目に入れているところもありますので、確認してみてください。

 腎臓の敵を挙げると、高血圧、高血糖(糖尿病)、コレステロールや中性脂肪の高値(脂質異常症)、肥満、喫煙が主なものです。これらを一つ一つ治していくことが、腎臓を守り、そして全身の血管を守ることにつながります。一日一日の生活を健康にしていくことが、全身の血管の動脈硬化予防へとつながっていくわけです。

 かかりつけ医の先生に検尿結果とクレアチニンの値を聞いてください。もし、これらの検査を最近したことがない人はぜひ受けられることをお勧めします。

 検査でこれらの異常があっても、自覚症状はほとんどありません。むくみや貧血、倦怠(けんたい)感、息切れなどの症状が出てくるのはかなり進行してからです。しかし、症状がないからと放置しておくのは、治療するチャンスを自分でつぶしているようなものです。健診や採血結果を見直して異常があった人は、かかりつけ医や腎臓専門医への相談をお勧めします。

(長崎市白鳥町、宮崎内科医院 院長  宮崎 正信)

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