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2011年8月1日掲載

意外に知らない鼻の役割


 8月7日は何の日かご存じでしょうか。「8(は)、7(な)」の語呂の通り「鼻の日」です。日本耳鼻咽喉科学会は1961年以来、毎年8月7日を「鼻の日」に制定して、鼻の病気に対する啓発を行っています。

 皆さんは鼻の働きをご存じでしょうか。主に、(1)空気を加温加湿し、肺から酸素を取り込みやすくする(2)空気中のちりや病原体から防御するため、くしゃみ、鼻みず、鼻づまりで体内に入れないようにする(3)においを感じる(嗅覚)−の三つの働きがあります。

 鼻の奥には、においを感じるための嗅粘膜があります。ここに、においの粒子が届くと、においを感じるわけです。人間の嗅覚は他の動物に比べて弱いのですが、焦げたにおいや、プロパンガスのにおいなど、身の周りの危険を感じるために、なくてはならない機能なのです。

 では、皆さんは鼻かぜや、アレルギー性鼻炎などで鼻がつまってにおいがしないときに、食事をされたことがあるでしょうか。その時の食事はおいしかったですか。

 私たちは味を口の中で感じていますが、においの情報が脳に入って、食べ物の味を際立たせることが分かっています。鼻かぜや、アレルギー性鼻炎などで鼻がつまっていると自然と口呼吸になり、鼻からにおいの粒子を吸い込むことができず、においを感じなくなります。このようなときには、食べ物がおいしくなくなります。これを「風味障害」といいます。

 食べ物がおいしくないとき、味の検査ばかりに気をとられると、風味障害の原因が分からないことがあります。口の中の検査に問題がないときは、鼻に異常がないか調べる必要があります。

 先にも述べましたが、鼻がつまっていると、自然に口呼吸になります。すると口の中の粘膜が乾燥してしまいます。乾燥すると味の分子がうまく唾液に溶けず、味が分かりづらくなります。さらに乾燥により舌にある味を感じる味蕾(みらい)が傷つき、味が分からなくなることがあります。このようなときも、鼻の病気を直すことが大切になります。

 このように鼻の働きは、私たちの生活の質を豊かにすることに大きく関与しているのですが、まだまだ社会的認知度が十分でないのが現状です。

 長崎市医師会は「鼻の日」にちなんで、8月6日(土)午後2時から同市栄町の市医師会館で、「お口から美味(おい)しく食べていますか?」をテーマにした市民健康講座を開きます。県耳鼻咽喉科医会、長崎市耳鼻咽喉科医会などが後援しています。

 耳鼻咽喉科の中でも頭頸部(とうけいぶ)外科を専門とするコムロ耳鼻咽喉科クリニック(長崎市)の小室哲院長が「『おいしさ』を感じる仕組み、味とにおい」、長崎医療センター(大村市)耳鼻咽喉科の田中藤信医長が「飲み込みにくい口・のどの病気」と題してそれぞれ講演する予定です。入場は無料ですので、時間のある方はぜひともご参加ください。

(松浦市今福町北免、武部病院耳鼻咽喉科・アレルギー科 医師  崎 賢治)

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