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2011年8月16日掲載

外耳の炎症

 夏に多い耳の病気は外耳の炎症です。

 耳の構造は体の外側から順に外耳、中耳、内耳に大別されます。外耳は耳介(耳たぶ)と外耳道(耳の穴)からなりたっています。

 外耳道は長さが約3センチ、直径が約1センチ弱のゆるく曲がった管状の構造になっています。外耳道の表面は薄い皮膚に覆われていますが、穴の入り口に近い外側3分の1は軟骨に、奥の3分の2は骨に囲まれていて、それぞれ軟骨部外耳道、骨部外耳道と呼ばれています。軟骨部外耳道には毛、皮脂腺、耳垢(じこう)腺がありますが、骨部外耳道にはこれらはありません。

 外耳道の炎症は、気温や湿度が高い夏の季節に多くなる傾向があります。外耳道は皮膚が湿っていたり耳垢がふやけると、細菌感染を起こしやすい環境になります。夏は外耳道に汗をかきやすくなりますし、プールや海水浴に行く機会が増えて外耳道に水が入ることが多くなるためのようです。

 また、外耳道では耳かきや耳さわりによる傷がきっかけで炎症を起こすことが多くあります。耳に入った水を取ろうとして強い刺激が加わってしまった場合、結果的に傷ができて炎症が生じやすくなるのです。

 外耳道の炎症には、外耳道全体が炎症を起こしたび慢性外耳道炎と、外耳道の一部が腫れる限局性外耳道炎(耳せつ)があり、多くの場合、黄色ブドウ球菌や緑膿(りょくのう)菌が原因となっています。真菌(カビ)が原因の外耳道真菌症の場合もあります。

 炎症を起こした際に具体的な症状は耳の痛み、かゆみ、耳だれ、耳のつまり感、難聴などです。耳の痛みは下顎を動かしたり、耳介を引っ張ったりすると強くなることもあります。このような症状がある場合には早めに耳鼻咽喉科を受診することをお勧めします。

 治療法は軽症であれば、局所の清掃と、局所への抗菌薬含有ステロイドの軟こう、抗菌薬点耳、ステロイド点耳などを行います。重症の場合は局所治療に追加して、抗菌薬や鎮痛薬の内服を行います。外耳道真菌症の場合は局所の清掃と、抗真菌薬クリームの塗布を行います。

 先も触れましたが、外耳道の炎症は耳かきや耳さわりがきっかけとなって生じることが多くあります。では、耳掃除はどのようにして行えばいいでしょうか。

 耳垢は、軟骨部外耳道で作られています。さらに耳には自浄作用といって耳垢を自然に外側に押し出す働きがあります。そのため耳掃除は耳の入り口から深さ1センチ程度までの範囲を、清潔な綿棒を使って力が入り過ぎないように優しく行うことが望ましい方法です。耳垢がふやけて取りやすくなっている風呂上りのときなどが良いでしょう。頻度は2〜3週間に1回で十分です。

 耳垢が非常に多い場合は耳の病気の可能性もあります。取れない場合や、たくさんたまっている場合は耳鼻咽喉科を受診していただく方が安全です。

(長崎市平野町、宗耳鼻咽喉科クリニック 院長  宗 英吾)

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