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2011年9月5日掲載

ロコモティブ・シンドローム

 昨年度の日本人女性の平均寿命は86・39歳(世界第1位)、男性は79・64歳(世界第4位)でした。平均寿命が長いことは喜ばしいことですが、本人・家族にとっては健康で、日常的に「介護を必要としない」で「自立した生活ができる」生存期間が長いことがさらに喜ばしいのは言うまでもありません。

 これを「健康寿命」と言い、平均寿命から介護年数を引いた数になります。2004年の調査では日本人女性の「健康寿命」は77・7歳、男性は72・3歳ですので、要介護状態が7〜8年間あることになります。この要介護状態を減らすために対策を講じないといけないのが、今回お話しする「ロコモティブ・シンドローム」です。

 「ロコモティブ・シンドロームってなんだろう」と思われる方がまだまだ多いのではないでしょうか。ロコモティブ・シンドローム(以下ロコモ)とは日本語で「運動器症候群」。「運動器の障害」により「要介護になる」リスクの高い状態になることを指します。

 ここでいう運動器とは骨・関節・靱帯(じんたい)、脊椎・脊髄、筋肉・腱(けん)など、体を支え、動かす役割をする器官の総称です。

 ロコモの原因となる「運動器の障害」には大きく分けて、「運動器自体の疾患」と「加齢による運動器機能不全」があります。

 運動器自体の疾患には、変形性関節症、骨粗しょう症、変形性脊椎症、脊柱管狭窄(きょうさく)症、関節リウマチなどがあります。一方、加齢による運動器機能不全とは、高齢になるにつれ運動器機能が衰えることです。

 具体的には「運動器自体の疾患」「加齢による運動器機能不全」ともに筋力低下、バランス能力低下などの「運動機能の低下」が起こり、転倒しやすくなります。転倒すると骨折を起こし、要介護状態に陥る危険性が高くなるわけです。

 ロコモの不安がある方は次の7項目をチェックしてみてください。

 (1)片脚立ちで靴下がはけない

 (2)家の中でつまずいたり滑ったりする

 (3)階段を上るのに手すりが必要

 (4)横断歩道を青信号の間に渡りきれない

 (5)15分くらい続けて歩けない

 (6)2キロ程度の買い物(1リットルの牛乳パック2個程度)をして持ち帰るのが困難

 (7)家の中のやや重い仕事(掃除機の使用、布団の上げ下ろしなど)が困難

 いかがですか。一つでも該当すればロコモの疑いがあります。

 ロコモの疑いのあるときは運動器の専門である「整形外科専門医」を受診してください。ロコモと診断されれば、それぞれに合ったリハビリを含めた治療が必要になります。きちんとした診断・治療を受けなかったために「健康寿命」が短くなった、ということのないようにしたいですね。

 10月8日は「骨と関節の日」です。ロコモに限らず「運動器」で心配なことのある方はこの機会に受診をお勧めします。

(諫早市幸町、コムタ外科・整形外科医院 副院長  小無田 要)

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