>>健康コラムに戻る

2011年10月3日掲載

緑内障の手術について

 緑内障という病名は最近、よく聞かれると思います。しかしわれわれが耳にする患者さんの言葉は「緑内障はすぐにでも失明する」というものです。実際は早期に適切な治療を受ければ、決してそのような怖い病気ではありません。ただ、目薬をしながら一生お付き合いしていかなければならない病気でもあります。治療を諦めた時が失明につながることになります。

 緑内障の中で最も多い原発開放隅角緑内障は、房水(眼球の中の水)の流出口に当たる部分(線維柱帯)が詰まって流れにくくなり、少しずつ眼圧上昇が起こり視神経を障害、視野が狭まる場合を言います。治療の基本は点眼薬ですが、薬が効かなかったり、進行したりすれば手術が必要になります。

 患者さんに手術を納得してもらうのは大変です。白内障手術と比較して、術後に見えるようになる手術ではないことからです。逆に手術後に少し視力が低下することもよくありますし、何度も行うこともあります。ですが、緑内障手術は視力をある程度犠牲にしても行わなければいけない手術なのです。

 手術をしないで眼圧が高いまま放っておくと、確実に失明につながっていきます。さらに緑内障が怖いのは、見えなくなってからではいくら手術をしても、見えるようにならないところです。

 このように緑内障の手術は「まもりの手術」です。悪くなる前に手術しなければいけないことをよく理解していただきたいと思います。

 房水の流れを改善する代表的な手術を説明します。

 【濾過(ろか)手術】
 トラベクレクトミーという世界的に最も多く行われている手術です。結膜の下に通路を作り、房水を眼球の外に導いてやる手術です。眼圧が大きく下がることが多い半面、視力低下や感染などの併発症が見られることがあります。かなり進行した緑内障に選択されることが多い方法です。

 【流出路手術】
 房水がもともと流れている目の中の道を掃除をして、流れを良くする手術です。眼圧下降効果はやや小さいですが、併発症が少なく、安全なため、緑内障があまり進行していない患者さんに適応があります。トラベクロトミー、トラベクトームがあります。

 (1)トラベクロトミー(線維柱帯切開術)
 目詰まりしている線維柱帯を切開し、その場所の抵抗をなくす手術です。

 (2)トラベクトーム
 最近行われるようになった新しい手術です。基本的な考え方はトラベクロトミーと同じです。1・7ミリの小さな穴を角膜(黒目)に開けて、電気メスで虹彩の根元(シュレム氏管内壁)を1・5センチほど切ります。6〜7分で済む手術で、入院も不要。仕事をしながらできるような手術です。体への侵襲が少なく、最初に行う緑内障手術としては最適と思われます。

 以上、緑内障の代表的な手術についてお話いたしました。もちろんこれ以外にもさまざまな術式があります。

(佐世保市俵町、溝口眼科 院長  溝口 尚則)

>>健康コラムに戻る