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2011年11月7日掲載

「気胸の胸腔鏡手術」

 近年、痛みが少なく、美容的に優れていて、しかも回復が早い内視鏡下手術が普及しています。胸部疾患に対しても従来の開胸手術から胸腔(くう)鏡手術が主流となっています。

 胸腔鏡手術の対象は肺がんのほか、できるだけ傷痕が目立たないように手術してほしいと強く希望する若年者に多い気胸にもよく採用されています。

 気胸とは、肺から空気が漏れ、胸腔にたまった状態をいいます。胸腔にたまった空気が肺を圧迫して虚脱させ、肺が十分膨らむことができなくなるため、胸痛、息ぎれ、呼吸困難、せきなどの症状を起こします。

 気胸の多くは自然気胸です。その原因は肺の表面にできた薄い空気の袋、肺胞の一部が嚢胞(のうほう)化した「ブラ」や胸膜直下にできた嚢胞「ブレブ」が破れて発症します。

 嚢胞が発生する原因や破れる原因ははっきりと分かっていませんが、体質的なものとか、痩せ型の人では成長期の骨の急成長に肺の成長がついていけず肺が伸びすぎるといった説もあります。

 自然気胸は原発性と続発性に分類されます。原発性自然気胸は10代後半から20代、30代に多く見られます。中でも背が高く、痩せて、胸が薄い男性に多く、その割合は女性の7〜10倍ともいわれています。

 手術が必要な症例は空気の漏れが止まらない場合と、再発を繰り返す場合、両側気胸の場合などです。気胸の手術はまず、脇の下に0・5〜2センチほどの小切開を3カ所行い、胸腔鏡、肺を持つ器具、切除縫合閉鎖する器具を挿入します。

 次に胸腔鏡で肺を観察し、空気漏れの原因となった嚢胞を探します。多くの場合、肺嚢胞は肺尖(はいせん)部(肺の上部)にあります。さらに生理食塩水を用いて肺の空気漏れ部を確認し切除縫合閉鎖します。その後、残存肺の切除断端を水に浸し空気漏れがないことを確認します。ちょうど自転車タイヤのパンク修理を想像されたらいいと思います。

 そして再発防止策として残存肺の切除断端に吸収性メッシュシートを貼り付け、その上から接着剤としてフィブリンのりを噴霧しメッシュを固定します。

 手術は大体60分以内に終了します。手術翌日から食事と歩行を開始し、4〜7日目に退院できます。手術創は3カ所とも全て脇の下にあり、手を下げた状態ではほとんど隠れ、外見上大変優れています。

 ただ、胸腔鏡気胸手術は開胸手術に比較し再発率が高いのが欠点です。前回手術の切離線近くにできた新生嚢胞が原因になることがあるため、再発予防処置として切離線上にメッシュシートを貼り付けます。この処置により10%近くの再発率を、4〜5%に半減できるようになりました。

 次に続発性自然気胸について述べます。年配の人に多く、肺気腫、肺結核、肺がんなどの肺疾患に伴う気胸です。手術は原発性と同様ですが、癒着や病変部が広範囲に及ぶこともあり手術時間や入院期間が若干長くなる場合があります。

(長崎市小峰町、聖フランシスコ病院 院長  大曲 武征)

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