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2011年11月21日掲載

「総胆管結石と胆のう結石」

 消化器科の外来では「胆石があるので取った方がいいでしょうか」という相談を受けることがあります。こういった場合、「胆のう結石」であることが多いのですが、実は「総胆管結石」というものもあり、同じ胆石でも症状や治療に違いがあります。

 総胆管とは肝臓で産生された胆汁を十二指腸に流す経路で、そこに存在する総胆管結石は胆石全体の約20%を占めます。一方、胆のうは総胆管の途中から分かれている袋状の構造物で、一時的に胆汁をためる役割を持ちます。この中にできる胆のう結石が胆石全体の80%弱を占めています。

 胆のう結石は60代、総胆管結石は70代に保有者のピークがあり、高齢化に伴い胆石保有者は増加傾向といわれています。

 胆のう結石によって起きる代表的な疾患は急性胆のう炎で、右季肋部(右上腹部)痛、発熱などの症状が出ます。重症例の発症率は数%とされていますが、一度発症すると改善しても再発率が高いとされています。

 初期治療については内科でも対応しますが、最終的には外科手術(胆のう摘出術)の実施が標準的であり、近年は腹腔(ふくくう)鏡下手術が中心です。薬物治療としては、胆石溶解薬のウルソデオキシコール酸の投与がありますが、その適応は一部の症例に限られ、胆石溶解には半年以上の長い期間が必要です。

 総胆管結石は胆石が胆のうや肝内胆管から総胆管へ落下してくる場合と、総胆管内に新たに形成される場合の二つがあります。これらが胆管を閉塞(へいそく)することで起きる発熱や黄疸(おうだん)、肝障害を伴う炎症が胆管炎です。膵炎(すいえん)を合併することもあり、また重症型として急性閉塞性化膿(かのう)性胆管炎という生死を分ける病態に至る場合もあります。

 治療としては結石により流れなくなった胆汁を排出(ドレナージ)する処置をします。

 その一つが、特殊な内視鏡を用いて十二指腸から胆管内にチューブを留置し、結石による閉塞を解除する「内視鏡的胆道ドレナージ術」です。もう一つが、体表から胆管もしくは胆のう内に胆汁排出用のチューブを留置する「経皮経肝胆道ドレナージ術」という手技です。どちらも外科手術ではありませんが、一定の技術と経験を要する専門的な治療です。こういった方法で急性期を乗り切った後に、原因となった結石を除去する治療に移ります。

 皆さんが健診で指摘される結石の大部分は胆のう結石です。長期間、無症状であるほど胆のう炎などの合併症が起こる率は低く(年率4%以下)、無症状であれば経過観察するのが一般的です。一方、総胆管結石は胆管炎を発症しやすく、重症化したり膵炎などを合併したりするリスクから、無症状でも治療が推奨されます。

 このように同じ胆石でも治療の方法や考え方が異なるため、胆石が見つかったら、まずはかかりつけ医に相談し、必要に応じて消化器専門医に相談することをお勧めします。

(長崎市片淵2丁目、済生会長崎病院消化器内科 医師  本吉 康英)

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