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2011年12月5日掲載

「インフルエンザの流行に備えて」


 インフルエンザは例年、冬の期間に流行する発熱を主とした呼吸器感染症です。国民の2〜3割、乳幼児からお年寄りまで幅広い人がかかります。寒くなるこの時期からはやり始めます。かからないためにどうしたら良いかお話します。

 予防法で知られるのはインフルエンザワクチンの接種です。17年ほど前、このワクチン接種を中止したことがあります。しかし、その翌年以降のインフルエンザの流行で、お年寄りの肺炎、インフルエンザなどで亡くなる人が急増し、子どもの脳症が増えました。長崎でも脳症で亡くなった子どもが多数出ました。

 このことから、ワクチンは学校などでの流行を完全に阻止できないが、お年寄りや乳幼児への感染、重症化を防いでいたことが分かりました。有効率は約70%とされます。

 ワクチンは任意接種(年令により公的補助あり)ですが、インフルエンザの重症化を防ぐ最も有効な手段です。2009年の新型インフルエンザでは、妊婦さんが重症化しやすかったことから、日本でも妊婦さんへのワクチン接種が積極的に行われるようになりました。できるだけ12月中に接種してください。ぜんそくなど慢性の病気を持っていて、インフルエンザにかかると重症化しやすい方はぜひ受けられてください。

 インフルエンザのウイルスはせきやくしゃみなどで患者さんから飛び散り、周りの人の鼻や口から侵入します。患者さんがせきをしたり、触ったりした際にウイルスが机の上や壁などに残り、それが他の人の手・指などに付き、鼻や口を触った時などにもうつります。

 みんなが触る所、例えばドアの取っ手や水道の蛇口、照明のスイッチなどを、拭いたり消毒したりすることが有効です。手に付いたウイルスは流水で洗い流し、消毒しましょう。食事前や外出先から戻った時は、手を必ず洗いましょう。

 ウイルスが体に入っても、すぐにうがいをすれば吐き出すことができます。水やお茶など身近なもので良いのです。がらがら音を立ててすると取れやすいでしょう。

 たとえウイルスが喉や鼻に入っても、人にはすぐには感染しません。粘膜の細胞には繊毛があって、ウイルスを粘液とともにからめ取るように運んで、タンや鼻水として排出するからです。

 マスクは緻密なものであれば、ウイルスの侵入を直接防ぎます。呼吸する際に空気の乾燥を防ぎ粘膜の繊毛運動を助けます。水分を適度に補給するのも同じ効果があります。温かい飲み物はより効果的です。流行が始まってしまったら、なるべく人混みに行かないようにしてください。

 予防の基本は十分な睡眠と栄養を取り、適度な運動をして、ストレスの少ない生活を送ることです。それでも高熱、関節痛、寒け、頭痛、せき、鼻水などがあって、体がだるいときは、かかりつけの先生に診てもらいましょう。インフルエンザと診断されたら、外出を控え、せきエチケットなどに心がけ、人にうつさないようにしましょう。

(長崎市滑石3丁目、わたなべ小児科医院 院長  渡辺 幹生)

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