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2012年2月20日掲載

「突発性難聴について」


 突発性難聴とは文字の通り、突然難聴を来す病気です。「昨日まではどうもなかった」「つい先ほどまでは何もなかった」のに急に発症するのが特徴です。

 ほとんどが片側の耳の症状であり、両側に起こることはまれです。男女差はなく、高齢者でも若い人でもかかります。ただ聞こえないだけでなく、耳の詰まり感、耳鳴り、めまい、吐き気といった症状を伴うこともあります。

 原因としては鼓膜のさらに深部にある内耳といわれる部分のウイルス感染説や血流障害説がいわれていますが、今のところはっきり分かっていません。誘因としてはストレス、睡眠不足などが考えられており、近年では糖尿病、高血圧、循環器疾患を持つ高齢者に発症が増えてきていることから生活習慣との関連も指摘されています。

 治療はまずはストレスを避け、睡眠をしっかり取り、安静にすることが大切です。それに加えて薬物治療も行います。軸になるのはステロイド剤(副腎皮質ホルモン)の投与です。ビタミン剤、循環改善剤なども併用します。血中の酸素濃度を上げて、内耳の循環障害を改善する目的で高濃度の酸素を吸入する方法もあります。

 外来でも治療は可能ですが、めまいがひどい人や聴力障害の程度が強い人、糖尿病や高血圧などの基礎疾患を持った人は入院が必要な場合もあります。

 とにかくこの病気は早期に治療することが大切です。発症から大体1週間以内に治療を開始すれば、元に戻る確率が高いとされています。

 逆に発症から長期間経過した場合や難聴の程度が強かったり、めまいを伴っていたり、糖尿病などの基礎疾患があったりする場合は治りにくいことが知られています。程度の差はあるものの、耳鳴りが残る場合もあります。

 診断する上では、区別しなければいけない病気があります。内耳の病気として知られるメニエール病や、まれではありますが聴覚神経に生じる腫瘍でも突発性難聴と似た症状を起こす場合があります。多くは問診と聴力検査で診断することが多いのですが、場合によっては目の動きを見る眼賑(がんしん)検査や頭部の精査を行うこともあります。

 加齢性の難聴と異なり、この病気は治る可能性のある難聴です。何の前触れもなく、急に片方の耳が聞こえにくくなったら、なるべく早い段階で近くの耳鼻咽喉科専門の医療機関を受診してください。

 最後になりますが、3月3日の「耳の日」にちなみ、日本耳鼻咽喉科学会長崎県地方部会と県耳鼻咽喉科医会は同4日(日曜日)午後1時から大村市東本町の大村市民会館で、第15回「耳の日」公開講座&相談会を開きます。

 講演内容は「中耳の病気」「乗り物酔い」「心と言葉と耳の関係」の3題です。その他にも質問コーナーや補聴器の相談・供覧コーナーを予定しています。参加は無料です。興味のある方はぜひ足をお運びください。

(長崎市江川町、津田耳鼻咽喉科医院 院長  津田 祥夫)


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