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2012年3月5日掲載

「夜間頻尿について」


 特別な原因がないのに、一日に10回以上排尿に行くことを頻尿といいます。そして、夜間頻尿は一晩に1回以上の頻度と定義されています。

 ただ、夜間睡眠時に2回以上の排尿があると生活の質(QOL)を低下させることが多いといわれ、2回以上の場合に治療の対象となることが多い。わが国では2回以上の夜間頻尿は、60歳以上の男性で約40%,女性で約30%と報告されています。
 夜間頻尿の原因としては次のようなことがいわれています。

 (1)夜間多尿 一日の尿量のうち夜間尿量の割合が多い状態を指します。具体的には高齢者では3分の1以上、若年者では5分の1以上といわれています。原因としては水分過剰摂取、薬剤、脳障害、高血圧、うっ血性心不全、腎濃縮力低下、下肢の浮腫、アルコール・カフェイン摂取、糖尿病などがあります。

 (2)ぼうこう容量の減少 前立腺肥大症、過活動ぼうこう(尿意切迫感を主症状とした排尿障害)、間質性ぼうこう炎(ぼうこう粘膜の知覚が高進する疾患)などです。

 (3)睡眠障害 不眠症、うつ病、睡眠時無呼吸症候群、むずむず脚症候群などです。

 治療を進める上では、病態や原因を見極めることが大切です。そのためには「排尿日誌」をつけることが有用です。排尿回数、昼間尿量、夜間尿量、一日尿量、最大1回排尿量などを記録しておくもので、病状の把握、治療に非常に効果的です。(排尿日誌はhttp://www.luts.gr.jp/からダウンロードできます)

 原因が前立腺肥大症の場合は、前立腺の緊張を解いて尿道を広げる働きのある「α1受容体遮断薬」を使用します。過活動ぼうこうの場合には、ぼうこうの過緊張状態を取る「抗コリン剤」が有用です。前立腺肥大症や過活動ぼうこうを認めない場合には夜間多尿を考えます。夜間多尿には昼間の利尿剤が有効といわれています。

 最近は脳梗塞の予防として、血液をさらさらにするために就寝前や夜間目覚めたときに、過度の飲水をされる方がいますが、その予防効果はありませんので、適度な量にしてください。夕方の散歩などの運動も有効といわれています。

 基礎疾患としての高血圧、心疾患、糖尿病などの治療も重要です。不眠症では適切な睡眠薬が必要です。若い人の夜間頻尿では睡眠時無呼吸症候群が疑われ、呼吸器内科での専門的な治療が必要なときがあります。

 夜間頻尿に伴い問題になるのが転倒、骨折です。夜間頻尿のある男性の15%、女性の18%ぐらいに転倒、骨折があると報告されています。

 生存率は夜間排尿回数1回以下に比べ、2回以上で有意に低下しており、死亡のリスクが高くなるといわれています。夜間頻尿の治療は、骨折やそれに伴う寝たきりの予防にもつながり、生命予後にも関係します。治療の重要性は高く、泌尿器科専門医での治療が望まれます。

(長崎市琴海形上町、ニュー琴海病院 院長  丸田 直基)


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