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2012年4月2日掲載

「シラミ症にご注意」


 シラミ症は20世紀前半まで世界中で広く見られる病気でしたが、殺虫剤が開発され、衛生状態も改善したことで一時激減しました。

 しかし、1971年の有機塩素系殺虫剤の輸入・製造禁止に伴い、わが国で使用可能な薬剤がなくなり、学童や園児にアタマジラミ症の集団発生が見られるようになりました。82年には年間2万4千人を超える患者が認められました。
 同年、ピレスロイド系殺虫剤(フェノトリン)がアタマジラミ駆除薬として発売され、80年代末期には2千人を切るまでに減少。しかし、94年度以降は再び増加傾向を示しています。

 全てのシラミが人体に影響を与えるわけではありません。動物に寄生するシラミは約500種確認されていますが、人に寄生するシラミは3種類。頭に寄生するアタマジラミ、衣服に生息するコロモジラミ、主に陰毛に寄生するケジラミです。

 シラミは卵−幼虫−成虫と発育します。シラミの種類により多少前後しますが、卵の期間は7〜10日、卵から成虫までは17〜20日、成虫の寿命は20〜30日です。成虫の大きさは1〜3ミリ。成虫の総産卵数は50〜150個です。人体から吸血することで栄養を取ります。

 シラミ症の主要症状は皮膚の激しいかゆみです。1、2匹の幼虫、または成虫が寄生し始めた段階ではほとんど無症状ですが、1カ月ほどして個体数が増加するころに激しいかゆみに襲われます。かゆみのため皮膚をかきむしり、その傷から細菌感染すると「とびひ」になることもあります。

 アタマジラミは直接接触で感染するため、頭同士を接触して遊んだり寝転んだりする児童間で集団発生することがあり、特に髪の長い女児に多い傾向が見られます。

 コロモジラミは罹患(りかん)している人の着衣を着たり、密着して寝たりすると感染することがあります。

 ケジラミはあまり移動せず直接接触することで感染するため、性行為感染症に分類されています。人体から離れても最適条件下では虫体として2〜3日、卵では10日間生存します。

 治療には、市販の殺虫剤であるフェノトリン製剤を使用します。卵には効かないため、少なくとも10〜14日間は継続使用する必要があります。すきぐしで直接除去したり、髪を短くしたりすることも有用な方法です。

 宿主を離れても生存する成虫や卵の駆除には、シーツやタオルなどを熱湯や55度、10分間の温風にさらすことも効果的です。

 ただ、症状が出現した時点で寄生から1カ月が経過しているため、家族内、児童間で感染している可能性が十分に考えられます。その場合は匿名で良いので学校、幼稚園などに報告し、家族全員でフェノトリン製剤を使用し、感染拡大を防ぐことをお勧めします。

 最近の報告では、フェノトリン抵抗性のアタマジラミが検出されています。シラミ症が疑われたり、治りが悪かったりする場合は、近くの皮膚科専門医の受診をお勧めします。

(長崎市滑石1丁目、あき山皮ふ科医院 副院長  穐山 雄一郎)
 

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