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2012年6月4日掲載

「小児の発熱」


 子どもは突然、熱を出します。小児科を受診する理由でも一番多いのが発熱です。そのほとんどのケースでウイルスや細菌が関係しています。

 発熱と聞くと「ワルモノ」のように思いがちですが、実はウイルスや細菌と有利に戦うために、体がわざと体温を上げているのです。病気の原因と戦うための防衛反応なのです。

 人間が快適に活動できる体温は、ウイルスや細菌にとっても居心地のよい温度です。体温が上がると、ウイルスや細菌も活動しにくくなります。また、体温の上昇とともに、免疫細胞は活性化されます。体温が高い方が、人間の体にとっては都合がよいのです。そのために、脳が指令を出して、体温を上げているのです。

 熱が出たときに一番心配なのは、「高熱で頭がおかしくなるのではないか」ということでしょう。しかし、40度の状態が数日続いても、発熱によって脳がやられたり、後遺症が残ったりすることはありません。高温の車内に子どもを放置して熱中症になったのでなければ、高熱が出ても大丈夫です。

 それから熱の高さと病気の重さは関係ありません。高熱が出たからといって、必ずしも重症ではないということです。

 なお、高熱が出たら、インフルエンザと思われる方が多いようですが、検査キットの普及によって、熱が高くないインフルエンザも多く見つかるようになりました。高熱がインフルエンザ特有の症状とはいえません。

 乳幼児では37・5度未満は平熱です。入浴、ほ乳、食事の直後や、泣いたり、遊んだりした後は体温が高くなっています。その場合は落ち着いてからもう一度、測ってみましょう。

 子どもの発熱が大人と違うのは、体温が高くなりやすい点です。子どもは体温の調整機能が未熟だからと考えられています。成長して調節機能が成熟すると、高熱を出すことも少なくなります。

 ただ、保護者としては「発熱はワルモノではない」と分かっていても、きつそうな子どもを見ると、どうしても心配になります。すぐに受診すべきか迷われると思いますが、生後3カ月を過ぎていて、機嫌がよければ、熱が出ていても急ぐ必要はありません。「機嫌がよければ」とは▽食べる(飲む)▽寝る▽遊ぶ−がだいたい普段通りにできているということです。

 解熱剤を使わなくても病気は治ります。解熱剤の効果で熱が下がっている間は、少し楽になることがあります。それを期待して使うのはよいでしょう。しかし、むやみに解熱剤を使うことはお勧めできません。

 繰り返しますが、発熱は病気への防衛反応です。薬で抑えると、かえって治りが遅くなることもあります。病気が治って熱が下がるのと、薬で熱を抑えるのは区別ができません。そのため発熱ばかりに気を取られると、診断や治療のタイミングを逃してしまうことも起こります。子どもの病気と発熱の関係を正しく理解し、対処していきましょう。

 (長崎市岡町、ごんどう小児科医院 院長  権藤 泉)

 

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