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2012年8月6日掲載

「腎尿管結石の最新手術」


 腎尿管結石は一生のうちに男性の7人に1人、女性の15人に1人が罹患(りかん)する国民病の一つです。結石の痛みは三大疝痛(せんつう)発作の一つに数えられるほど強烈です。

 激痛の割に結石は1センチ以下と小さいことが多く、6割から7割の方はぼうこうから自然に尿と一緒に排せつされます。しかし、排せつされずに痛みが続いたり、腎盂(じんう)腎炎を合併したり、結石が大きく排石できなかったりする場合には手術が必要になります。

 また、健診で見つかる無症状の結石でも腎機能が低下している場合には手術の適応です。

 手術は大きく分けて、開腹手術、体外衝撃波結石破砕術(ESWL)、内視鏡手術の三つの方法がありますが、特殊な結石を除き開腹せずに手術が可能です。

 ESWLは体の表面に傷をつけずに、体外から衝撃波のエネルギーを照射して結石を砕き、尿と一緒に体外に排せつさせる方法です。非常に優れた治療法で、県内では12カ所の病院で実施していています。

 ただ、レントゲンに写らない結石は治療することが難しく、大きな結石や硬い結石の場合は10回以上の治療が必要になることもあります。そうなると、衝撃波の腎機能に対する影響が問題です。また、結石が砕けても尿管に詰まって体外に排せつされない場合もあります。

 内視鏡手術には経皮的腎尿管結石摘出術(PNL)と経尿道的腎尿管結石摘出術(TUL)があります。PNLは背中から腎臓に内視鏡を挿入し、超音波装置などで結石を破砕して摘出する方法です。主に大きな腎結石に対して行われます。

 TULは尿道からぼうこうを経由して、尿管や腎臓の中に尿管鏡という特殊な内視鏡を挿入し、治療する方法です。以前は下部尿管結石しか治療できませんでしたが、医療技術の進歩で非常に細くて柔軟性のある軟性尿管鏡や結石治療用のレーザー装置が開発され、約5年前から軟性尿管鏡を用いたf−TULが全国的に行われています。

 この手術は1〜2ミリの尿管を5ミリまで拡張後、2ミリの太さの内視鏡を腎臓まで挿入し、0・2ミリレーザーファイバーで結石を小さく砕いて摘出します。尿の通路を利用した手術のため、皮膚にメスを入れたり、外科領域の内視鏡手術のように腹部に穴を開ける必要はありません。

 レーザーの破砕力が非常に強力で、ESWLでは治療できない硬い結石も破砕可能です。大結石でも合併症などを考慮し2、3回に分けて手術を行えば治療できます。

 f−TULは、細い尿管の中での精密な手術です。出血や尿管損傷、腎盂腎炎などを合併する危険性もあり、簡単な手術ではありません。ただ、理論的には、腎臓から尿管の全ての結石の治療が可能であり、腎尿管結石に対する理想的な手術法であるといえます。

 しかし、県内でf−TULを行える病院は残念ながら2カ所しかなく、今後の普及が望まれるところです。


(長崎市片淵2丁目、済生会長崎病院泌尿器科 部長  松尾 良一)


 

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