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2012年9月3日掲載

「『ロコモ』の原因疾患」


 最近「ロコモ」という言葉を耳にしたり、目にしたりする機会が増えてきました。「ロコモ」という言葉は英語の「locomotive syndrome」(運動器症候群)の通称で、骨、関節、筋肉といった運動器の機能が衰えてきている状態を指しています。

 ロコモの原因となる骨や関節の三大疾病として「変形性関節症」「脊柱管狭窄(きょうさく)症」「骨粗しょう症」があります。

 変形性関節症では、加齢や肥満などで股関節や膝関節に過度の負担がかかると、関節軟骨が擦り減ります。その欠片が慢性的な炎症を起こして関節に痛みや変形を生じさせ、歩けなくなることもあります。

 脊柱管狭窄症では、神経が通っている脊柱管が加齢で狭くなり、神経が圧迫されます。頸部で狭窄があれば手のしびれや使いにくさ、つまずきやすさが生じ、腰部で狭窄があれば臀部(でんぶ)、脚に痛みやしびれを生じ、歩きにくくなります。

 骨粗しょう症では、加齢や女性ホルモンの減少によって骨代謝のバランスが崩れるために、骨がスカスカになって骨折しやすくなります。背骨の圧迫骨折を起こしたり、脚を骨折してしまうと歩行困難になります。

 加齢とともに運動機能が低下していくのは、ある程度は自然なことです。しかし、そのままにしておくと、行き着く先に「要介護」の生活が待っている恐れがあります。

 「ロコモ」は立ち上がったり、歩いたりすることが難しくなっている状態から、そうなる兆しが少しずつ現れ始めている状態までを広く指します。この状態を悪化させず、改善させる方法があります。それは自分に合った適切な運動を継続して行なうことです。

 「脳を鍛えるには運動しかない!」というハーバード大医学部臨床精神医学科の准教授が書いた本には、運動は体を鍛えるだけではなく、脳を鍛える効果もあったと書かれていました。適切な運動をすることにより、子どもは成績が上がり、大人はストレスやうつを抑え、認知症になる確率も下がるということでした。

 運動は、少しきついと感じる程度の強さでなければ効果がありません。筋肉や骨を丈夫にするためには、今以上の筋肉や骨が必要であるということを伝達しなければならないからです。

 運動を継続しなければならないのも同様の理由によります。筋肉に乳酸のような疲労物質がたまると、体はもっと筋肉が必要であると感じます。骨であれば、骨自身がたわむ量が大きくなると骨をもっと強くしないといけないと判断する仕組みが体には備わっているのです。

 しかし、適切な運動量というのは個人差が大きく、体調や既往症などでも変わってきます。ロコモに限らず運動器で心配なことがある方は整形外科やリハビリテーション科などで診察を受け、指導してもらうことをお勧めします。


(大村市松原1丁目、山田整形外科スポーツクリニック 院長  山田 昌登嗣)

 

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