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2012年9月17日掲載

「ロコモの対策と治療」


 厚生労働省が7月に発表した統計結果によると、昨年度の日本人女性の平均寿命は85・9歳、男性79・4歳といずれも前年度を下回りました。女性は25年間守ってきた世界一の座を香港に譲り第2位に、男性も8位に順位を下げました。東日本大震災で多くの死者が出たためとされていますが、それでも日本が世界有数の長寿国であることに変わりはありません。

 さて、平均寿命は人間が生まれてから死ぬまでの単純な期間を表すのに対して、ヒトが健康で、毎日を「介護を必要としない」で「自立した生活ができる」状態で暮らせる期間を健康寿命といいます。

 健康寿命を脅かす三大原因は認知症と近年有名になったメタボリックシンドローム(メタボ)、そしてもう一つがロコモティブシンドローム(ロコモ)です。なじみがない言葉かもしれませんが、「人間は運動器によって支えられて生きている。運動器の健康には医学的評価と対策が重要であることを日々意識してほしい」と2007年に日本整形外科学会が提唱しました。

 メタボが心臓や脳血管などの「内臓の病気」で健康寿命を短くするのに対して、ロコモは「運動器(骨、関節、筋肉など体を支え、動かす役割をする器官)の障害」によって寝たきりや要介護状態になる恐れが増すわけです。

 「最近、足腰が弱ってきた気がするけど、これってロコモ?」と思われた方は次の七つのロコチェックをしてみましょう。

 (1)片脚立ちで靴下がはけない

 (2)家の中でつまずいたり滑ったりする

 (3)階段を上るのに手すりが必要である

 (4)横断歩道を青信号で渡りきれない

 (5)15分くらい続けて歩けない

 (6)2キロ程度の買い物(1リットルの牛乳パック2個程度)をして持ち帰るのが困難

 (7)家の中のやや重い仕事(掃除機の使用、布団の上げ下ろしなど)が困難

 この中で一つでも当てはまれば、ロコモの疑いありです。近くの整形外科専門医のメディカルチェックを受けて対策を練りましょう。

 診察を受けて骨、関節、靱帯(じんたい)などに問題がなければ、転倒や骨折予防のためにロコモーション・トレーニング(ロコトレ)を始めましょう。

 推奨されるのが次の二つです。

 (1)開眼片脚立ち訓練(フラミンゴ療法) 両目を開けて立ち、片脚を5センチほど上げて1分、次に反対の足を上げて1分。これを1日3回行う。

 (2)スクワット 両足を肩幅より少し広げて立ち、椅子に腰掛けるようにお尻をゆっくり下ろす。膝は曲げても90度を超えない程度で5、6回。これを1日3回行う。

 ほかにストレッチ、ラジオ体操、ウオーキングなどもよいでしょう。「ロコチェック」と「ロコトレ」で健康寿命をできるだけ平均寿命に近づけていきたいものですね。


(諫早市久山台、たしろ整形外科 院長  田代 宏一郎)

 

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