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2012年10月1日掲載

「ドライアイ」


 涙はまばたきにより、薄い膜となって目の表面を保護しています。「ドライアイ」とは涙の量的不足、または質的異常が原因で保護効果が不十分なために障害が引き起こされる病気です。日本では約800万人が悩まされていると推定されています。

 症状は目の乾燥感だけでなく、異物感、痛み、まぶしさ、疲れなど、多様で慢性的な不快感を生じます。「目の疲れ」を感じたとき、その原因の約60%が「目の乾き」にあるといわれています。

 原因もいろいろなものがあります。一つは年齢で、加齢により涙の量や質が低下します。

 生活環境も影響します。パソコンなどの画面を見つめるVDT作業や車の運転を長時間行うと、まばたきの回数が普段の4分の1に減少します。オフィスでは約30%の人がドライアイといわれています。冬の乾燥した季節やエアコンによる乾燥、たばこの煙も症状を悪化させます。ストレスや夜型生活などライフスタイルの関与も指摘されています。

 コンタクトレンズを装用するとまばたきによる「涙の交換率」が低下します。ハードでは約20%、ソフトでは約3%にまで下がり、目に負担をかけています。

 全身の病気によって引き起こされる場合があります。シェーグレン症候群は免疫の異常で涙や唾液などが出にくくなります。ドライアイと口内乾燥(ドライマウス)があるときは早めに病院で検査を受けてください。

 内服薬の血圧を下げる薬や精神疾患薬などの中には涙の量を減少させるものもあります。点眼薬に含まれている防腐剤が涙の安定性を低下させることもあります。

 アイメークにも注意が必要です。まぶたには目の表面の涙が蒸発しないための油が出るマイボーム腺がありますが、この部分に濃い化粧をすると油の分泌ができず、乾燥しやすくなります。

 ドライアイの検査には、涙の量を調べるシルマー試験があります。ろ紙をまぶたに挟み、出てくる涙の量を測ります。目の表面の状態を確認するため「フルオレセイン染色液」を少量点眼します。傷の有無や、目を開けたままにして涙の膜安定性を調べます。いずれも簡単にできて、強い痛みなどはありません。

 治療方法の一つが点眼薬です。症状が軽ければ、潤いを持たせる人工涙液、ヒアルロン酸点眼薬で緩和させることができます。近年は涙を量、質の両面から改善させるジクアホソルナトリウム点眼薬、自覚症状改善効果も示されているレバミピド点眼薬が使用できるようになっています。

 涙が鼻へ流れ込む通り道(涙点)をふさいで涙を目にとどまらせる涙点プラグもあります。

 長時間のVDT作業では、適度の休みを取ることが重要です。コンタクトレンズの装用時間を減らす、加湿器を使用することも有効です。

 ドライアイは、慢性的な目の不快感や疲れをもたらし日常生活の質を著しく低下させます。目の乾燥や疲れを感じたら、早めに眼科を受診してください。


(西彼時津町浦郷、うらの眼科クリニック 院長  浦野 哲)

 

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