>>健康コラムに戻る

2012年10月1日掲載

皮膚の日によせて

「水虫について」

 私たちの、文字通り身近にいるカビの代表が、白癬(はくせん)菌、正式には皮膚糸状菌と呼ばれる水虫やタムシの原因菌です。わが国の人口の20%以上、特に高齢者では半分以上の人が、気付かないままに、あるいはれっきとした水虫として、この菌を持っていると考えられています。まさに国民病といってよいでしょう。

 水虫には誤解されている点がたくさんあります。まず「水虫はかゆい」ということ。これはテレビのコマーシャルで流される映像が影響していると思いますが、ほとんどの水虫はかゆくありません。つまり自分は水虫でないと思っている人も多いということです。

 かゆみがあるのはごく一部、重症の水虫で足の指の間が湿ってただれているか、足の裏などに水ぶくれを作ったときです。

 次が「水虫の特効薬はない」ということ。現在市販されている水虫薬は非常に抗菌力が強く、うまく使えば水虫の根治も可能です。しかしその前に、水虫を正確に診断してもらい、薬の正しい使い方、使用範囲、使用期間など、皮膚科専門医に相談してきちんと治療することが大事です。

 今回の「皮膚の日」講座では、水虫の症状、診断法、薬などについて説明し、さまざまの背景を持つ患者さんに最も適した対処法を考えていきたいと思います。

(長崎市樺島町、日本海員掖済会長崎病院顧問  西本 勝太郎)


「帯状疱疹」

 帯状疱疹(ほうしん)という病名を聞いたことがありますか。これは皮膚に痛みのある赤い発疹、水膨れができる病気です。原因は水痘・帯状疱疹ウイルス。水ぼうそうと同じウイルスにより生じる感染症なのです。

 生まれて初めて水痘・帯状疱疹ウイルスに感染すると、水ぼうそうとして発症します。しかし、水ぼうそうが治った後も、ウイルスは体内の神経節という場所にずっと潜んでいます(これを潜伏感染といいます)。

 加齢やストレス、疲労が引き金となって、ウイルスに対する免疫力が低下すると、潜んでいたウイルスが再び活動を始め、神経を伝わって皮膚に到達し、帯状疱疹として発症します。

 帯状疱疹が発症すると、体の左右どちらか一方の神経に沿って痛みと帯状の皮膚症状が現れます。当初は皮膚症状が出現せず、痛みだけであることが多いため、痛みが出現してから皮膚症状が現れるまでの間、約1週間くらいは診断がつかないこともしばしばあります。

 治療は抗ウイルス薬の内服、もしくは点滴を中心に、症状に応じて鎮痛剤を使用します。しかし、皮膚症状が治っても、帯状疱疹後神経痛といって痛みが残ることがあります。この痛みは60歳以上の方や皮膚症状が重症だった方に残りやすいといわれています。

 初期治療が遅れた場合にも帯状疱疹後神経痛になりやすいといわれています。痛みのある皮膚症状がありましたら、早めに近くの皮膚科専門医に相談してください。

(長崎大学病院皮膚科・アレルギー科 助教  富村 沙織)

>>健康コラムに戻る